2015 Fiscal Year Annual Research Report
ケミカルバイオロジーによるエストロゲン陽性乳癌の病因解明と化学予防法の開発
Project/Area Number |
26670337
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
渡邉 元樹 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40723581)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分子標的癌予防 / ケミカルバイオロジー / ERα陽性乳癌 / cyclin D1 / ANT2 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はエストロゲンレセプター(ERα)陽性乳癌の増殖を抑制する食品成分や化合物をスクリーニングし、ケミカルバイオロジーの技術を駆使して、それらの化合物共通の結合タンパク質を同定し、乳癌の化学予防法実現に向けた分子基盤の確立を目標とするものである。 第1段階として、ERα陽性ヒト乳癌細胞株MCF7に対し、ERαの発現を抑制し、かつ増殖抑制効果をもたらす化合物として、セサミノール、ペリリルアルコール、トログリタゾンの3化合物を見出した。第2段階として、それら3化合物共通の結合タンパク質として、MALDI-TOF MSによりミトコンドリア内膜タンパク質として知られるANT2を同定した。第3段階として、siRNAの手法を用いて乳癌細胞内におけるANT2の機能解析を行った。siANT2処理により、MCF7はG1期停止および細胞増殖抑制効果を示した。さらにsiANT2処理により、乳癌を含む多くの癌で過剰発現しているcyclin D1の発現量が減少することを発見した。その詳細なメカニズムとしてsiANT2により、(1)cyclin D1 mRNAが減少すること、(2)cyclin D1 mRNAの翻訳に重要なmTORC1経路を抑制すること、(3)プロテオソーム依存的にcyclin D1タンパク質の発現が減少することを見出し、ANT2による多様なcyclin D1制御機構を明らかにした。さらにセサミノールおよびトログリタゾンは、これらsiANT2と同様の作用機序を有することが明らかとなり、これらの化合物がANT2と結合することでその機能を阻害している可能性が示唆された。 以上の結果から、ANT2はERα陽性乳癌細胞の増殖を司る"master key molecule"として、乳癌化学予防における新規の標的分子である可能性が考えられる。
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