2014 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリア機能異常は高齢期の重要な負の健康アウトカムに関与するか
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26670342
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
新開 省二 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (60171063)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 雅史 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (80393114)
藤田 泰典 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (30515888)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分子疫学 / ミトコンドリア / 加齢 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、草津縦断研究で収集された血清および追跡データを用いて、血清GDF15濃度と高齢者の余命との関連を調べることを目標にして、以下のように研究を進めた。(1)GDF15市販抗体を購入しAlphaLISAによるGDF15測定システムを樹立した。(2)2008年から2013年の草津町高齢者健診(年1回、合計6回)を受診したのべ3,665人のうち初受診であった年のデータをベースラインとし(n=1,148)、この1,147人について2014年11月末まで追跡し、異動情報から生存例、死亡例、転出例を特定した。(3)AlphaLISAによるGDF15測定システムを用いて、1,147人のベースライン血清中のGDF15濃度を測定した。(4)追跡期間中(平均追跡年数4.7年)で死亡したものは99人(8.6%)であった。追跡期間中に転出したもの73人は打ち切りデータとして扱った。GDF15濃度から四分位を算出し、それに基づいて追跡対象者を4群にわけ、4群間で追跡期間中の死亡リスクを比較した。Kaplan-Meier法による生存率曲線の比較では、第1四分位(GDF15濃度:0.16-0.58ng/mL)に比べると第3四分位(0.78-1.01ng/mL)および第2四分位(0.59-0.77ng/mL)さらに第4四分位(1.02ng/mL以上)の順で死亡リスクが高く、4群間の等質性検定(Log Rank検定)では極めて有意であった(p<0.001)。また、Cox比例ハザードモデルを用いて性および年齢を調整しても、第1四分位に比べた第4四分位の死亡のリスク比は2.07(95%信頼区間:1.01-4.25)であり、統計学的に有意であった(p<0.047)。さらに、logistic regression plotによるGDF15濃度と死亡リスクとの関連性は正の相関性を認めた(p<0.067)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
評価できる点は、AlphaLISAによるGDF15測定システムを樹立することができたこと、その測定システムを用いて大規模高齢者コホート研究の保存血清中のGDF15濃度を高精度で測定できたこと、コホート研究ベースライン調査への参加者についてさらに追跡期間を延長して異動情報を収集できたこと、これらの上で血清GDF濃度をその後の余命との関連を分析し、性および年齢を調整しても血清GDF15濃度が死亡の予測因子であることを明らかにすることができたことである。他方、当初予定していた健康余命(=要介護認定までの期間)との関連分析までは手が付けられなかったことが課題として残された。
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Strategy for Future Research Activity |
高齢者コホート研究とリンクすることにより、ミトコンドリア機能異常のマーカーである血清GDF15濃度が、高齢者の余命と関連していることが明らかになったことは画期的なことである。一方で、その関連性は統計学的に比較的弱いものであり、さらにGDF15濃度と健康余命あるいは平成27年度に計画していた認知機能低下との関連性をみるには、草津縦断研究では対象者の追跡期間を延長することと、他のコホート研究ともリンクすることでサンプルサイズを拡大することが必要と考えられる。そこで、今後は現研究対象者についてはさらに1年間追跡期間を延長することと、われわれがもう一つ保有している鳩山コホート研究とのリンクを考えている。ここではベースライン調査(2010年実施)に参加した約740人の血清が保存されており、今日まで追跡情報(死亡、介護保険認定、認知機能の変化)が得られている。草津縦断研究と鳩山コホート研究を統合することで、血清GDF15濃度の臨床疫学的意義をより詳細に調べることができる。
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Causes of Carryover |
直接研究費の旅費に大きな差額が生じたためであるが、これはGDF15濃度と介護保険認定との関連分析に必要な介護保険情報の収集を当初計画では予定していたが、それを次年度の研究事業に回したためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
草津縦断研究における介護保険情報の収集にあてるとともに、次年度はサンプルサイズを拡大して研究を進める必要が生じたため、鳩山コホート研究における転記情報や介護保険情報の収集に伴う経費に充てる予定である。
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Research Products
(5 results)