2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26670347
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
松戸 隆之 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (80209577)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 院内感染管理 / ポアソン過程 / 確率過程 / MRSA |
Outline of Annual Research Achievements |
院内感染のアウトブレイクとは、病院内の人的要因や環境要因により、感染症が通常発生しているレベル以上に増加することである。多くの病院では、アウトブレイクの早期発見のために、定期的な感染症発生件数や病原微生物の分離件数の集計とその推移の監視(サーベイランス)が行なわれている。一方でMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)のような常在菌においては、主に宿主要因に起因する自然発生的な感染(蔓延性感染)も起こりうるため、離散的な値を取る発症/菌分離件数からアウトブレイクを検知するためには、確率論に基づく統計学的有意性の検定が必要であるが、そのような厳密な計算は行なわれていないのが現状である。 本研究は、実際の菌の分離状況データに基づいて、院内感染が生起する確率過程論的なモデルを導き、個々の病院/病棟において、蔓延性感染の頻度が不変であるという帰無仮説のもとで、定期的な集計期間の発症/菌分離件数の値の確率値を与える厳密な計算方法を提示することを目的とした。 MRSAの実際の分離状況の時系列データを解析した結果、一定の集計期間の分離件数の確率分布は、ポアソン分布でよく近似され、また菌分離間隔の分布は指数分布で近似されることが示された。これらの事実からMRSAの検出過程は、定常ポアソン過程としてよく近似されると考えられ、ある期間の検出件数の確率は、平均検出頻度と期間の積を平均値とするポアソン分布の上側確率として与えられ、また連続する検出期間の和の分布はガンマ分布で与えられる。 本研究の成果により、サーベイランスで得られたデータについて、厳密な統計学的検定が可能となり、院内感染のアウトブレイクの早期発見と迅速な対応に寄与することが期待される。
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Research Products
(1 results)