2014 Fiscal Year Research-status Report
オートファジーを新規指標とする皮膚損傷受傷後経過時間判定法の樹立
Project/Area Number |
26670357
|
Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
石田 裕子 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (10364077)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 章彦 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (60136611)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 創傷治癒 / オートファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,オートファジーが受傷後経過時間判定における新しい指標となり得る可能性を検証するものであり,基礎的研究と実務的研究を組み合わせた包括的研究である.基礎的研究ではマウス皮膚損傷モデルを用いて経時的に損傷部を採取し,治癒過程で出現するオートファジーを免疫組織化学的,生化学的,および分子生物学的に検出して,その出現様態を明らかにする.これらの基礎的研究結果に基づいて,実務的研究では法医剖検例から採取した受傷後経過時間の判明している皮膚損傷試料について,免疫染色および蛍光二重免疫染色によりオートファジーの検出を行う.平成26年度は,主にマウスを用いた実験を行うとともにヒト剖検試料の収集に努める. 皮膚創傷部におけるオートファジーの時間的および空間的出現様態を検討した.Balb/c野生型マウスの背部皮膚に直径4 mmの打ち抜き損傷を作製したところ,オートファゴソーム形成のマーカーであるautophagosome membrane-bound form of microtubule-associated protein 1 light chain 3 (LC3II)の遺伝子およびタンパク質発現が受傷前と比べて受傷後1日で有意に減少していた.一方,LC3に直接結合してオートファジーにおいて選択的に分解される基質であるp62の発現は,遺伝子およびタンパク質レベルで受傷前と比べて受傷後1日で有意に亢進していた.蛍光二重免疫染色において,LC3,p62,ならびにリソソームのタンパク加水分解酵素であるカテプシンDのタンパク質発現をF4/80陽性マクロファージに認めた.以上より,皮膚創傷部では治癒過程初期に主にマクロファージにおいてオートファジーが抑制されてマクロファージが活性化し,創傷治癒に重要な役割を担っている可能性が示唆された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,近年生命科学の分野で大きな注目を集めている細胞内のタンパク分解システム「オートファジー(autophagy)」が,皮膚損傷の受傷後経過時間判定のための指標となり得るかについて検討するものである.法医学の領域でこれまでオートファジーに着目した研究はほとんどみられないが,我々はこれまでに,皮膚損傷治癒過程における損傷部局所でのオートファジー検出にチャレンジしてその出現様態を明らかにしてきた.今後,それが受傷後経過時間判定のための有用な指標となり得るか否かについて検証する.基礎的研究と実務的研究の結果を総合し,オートファジーの出現様態と受傷後経過時間との関連性を統計的に解析して既存の指標を用いた診断法と比較検討することにより,法医実務に応用可能なオートファジーを指標とする新しい受傷後経過時間判定法を確立することができるものと期待できる.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究計画を鋭意継続しながら法医実務への応用研究として,法医剖検例において受傷後経過時間が判明している皮膚損傷試料について,基礎的研究で得られたオートファジー検出に適した抗体を用いて免疫組織化学的検討を行う.さらに,適切な抗体の組み合わせによる蛍光二重免疫染色法を用いて,より特異的なオートファジーの検出を試みる.動物実験の結果と実務的研究の結果を総合的に考察し,オートファジーの出現様態と受傷後経過時間の関連性について統計的解析を行い,オートファジーを指標とする受傷後経過時間判定法を確立する.
|