2014 Fiscal Year Research-status Report
臨床検体を用いた次世代シークエンサーによる消化器癌の網羅的癌遺伝子解析
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26670380
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
榎本 信幸 山梨大学, 総合研究部, 教授 (20251530)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 次世代シークエンサー / 膵管内乳頭粘液性腫瘍 / 膵神経内分泌腫瘍 / GNAS変異 / 分子標的薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝子変異の検出には従来多くのDNA量を用いてごく一部の領域の変異しか検出できず、また高コストかつ結果が得られるまで長時間を要した。そのため、微量かつ腫瘍以外の細胞成分を含む臨床検体からいくつもの癌関連遺伝子変異を検出することは現実的でなかったが、最近開発された次世代シークエンサーでは、わずかなDNA量で一度に多くの癌関連遺伝子変異を高感度に検出することが可能となった。 網羅的遺伝子解析は近年盛んにされているが、多くは疾患ごとの解析、つまり膵癌と遺伝子変異、肝癌と遺伝子変異、といった内容であり、検出された遺伝子変異の臨床的意義は不明であった。今後はただ単に網羅的遺伝子解析をするのではなく、詳細な臨床データと合わせ解析を行い、遺伝子変異の意義を見出すことから新たな診断法、治療法を見出していく必要がある。 以上の考えに基づき、臨床教室であるがゆえに得ることが可能な、高精度な診療から得た臨床情報と臨床検体を用い、次世代シークエンサーにより得られた遺伝子変異の臨床的意義解明を目的とし研究を推し進めた。その結果現在二つの知見が得られつつある。ひとつは膵癌の前癌病変ともいわれる膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)ではGNAS遺伝子変異が約40-70%の症例でみられることが知られているが、われわれの臨床情報と併せて解析した結果、膵管拡張の目立つ症例すなわち粘液が豊富なIPMNでGNAS変異がみられることが判明した。IPMNは病型により悪性度が異なり、われわれの知見が病型診断に有用な可能性が示唆された。二つ目は、近年切除不能な悪性腫瘍に対する様々な分子標的薬が登場しているが、すべての症例に有用というわけでないことから治療効果判定が事前になされることが期待される。われわれは膵神経内分泌腫瘍で使用されるmTOR阻害剤の有効性を、次世代シークエンサーによる腫瘍変異遺伝子との関連を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
検体採取については、切除されたパラフィン包埋切片(FFPE)、膵液、内視鏡下生検検体などを用いているが、本研究に必要なこれらの臨床検体および臨床情報の取得は問題なく施行できている。各検体からのDNA抽出については、多量の検体を扱うために煩雑になるが、この過程には核酸抽出器が導入され半自動的にできている。また、本研究は遺伝子解析研究であるが、倫理委員会や研究内容の情報公開も問題なく遂行されている。 遺伝子解析には計画通りにIon PGMシークエンサー(ライフテクノロジーズ社)を用い、50種類の癌関連遺伝子に含まれる約2800種類の変異検出に成功している。 臨床データと遺伝子の関連についての解析については、臨床データの匿名化を行いつつ臨床因子と変異遺伝子の関連の解明に努めており、おおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在消化器疾患と遺伝子変異の関連について、疾患種類、症例数を増やしつつ解析を継続中である。当初の計画では癌関連の50遺伝子を中心に解析する予定であったが、今後得られる知見によってはさらに多くの遺伝子変異を追加で解析する可能性がある。
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Research Products
(5 results)