2014 Fiscal Year Research-status Report
ヒトiPS細胞を用いた消化管前駆細胞の純化・増幅およびそれを用いた再生医療基盤
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26670384
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
粂 昭苑 東京工業大学, 生命理工学研究科, 教授 (70347011)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 多能性幹細胞 / 腸前駆細胞 / 分化誘導 |
Outline of Annual Research Achievements |
腸上皮は増殖・再生が盛んな組織である。しかし、慢性炎症性腸疾患など重篤な腸炎においては、再生力が追い付かず、細胞移植による治療が必要になる場合が増えており、再生医療の技術開発が期待されている。近年、ヒト腸上皮幹細胞の単離と培養が報告された (Sato et al., 2011)。しかし、その維持培養には、非常に多くの液性因子を要するためコストが高く、またマトリゲル内で三次元的に培養するため操作が複雑である。 これまで申請者らは、ヒトiPS細胞から腸上皮前駆細胞を効率的に分化誘導する系の構築に成功した(Ogaki., Stem Cells, 2013)。分化した腸上皮前駆細胞は、成熟化した吸収腸細胞・杯細胞・パネート細胞および腸管内分泌細胞に誘導できることを確認している。しかしながら、ヒトiPS細胞由来の分化細胞を用いた腸炎モデルマウスへの移植治療効果を評価する実験系は構築できていない。また、移植を行うためにはより純度が高く、多くの細胞数が必要である。 本研究では、申請者がこれまで構築してきた、ヒトiPS細胞から腸上皮前駆細胞への分化誘導系を利用して、1)腸上皮細胞を作成し、純化する方法を確立すること、2)ヒトiPS細胞由来の腸上皮細胞を増幅することで、分化細胞の量産する方法を確立することを目指す。近い将来に多能性幹細胞由来腸上皮を用いた移植治療を検討できるようにする。本年度では、1)腸管上皮の純化方法の確立、2)腸炎モデルマウスの作成、3)腸管上皮の分化誘導効率の改良、を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画について、下記のようにそれぞれ進展している。 1)腸管上皮の純化方法の確立:ヒトiPS細胞からCdx2陽性の腸上皮前駆細胞を分化誘導して作成した。分化した、腸上皮前駆細胞が特異的な基質への接着性を探索するために、様々な細胞外マトリクスでコーティングを行ったディッシュ上に腸上皮前駆細胞を播種し、細胞外マトリクスへの接着能を調べた。その結果、接着性の最も良い細胞外マトリクスがファイブロネクチンであることが分かり、これを分化腸上皮前駆細胞の純化に利用できることが期待された。次にその分子機序を調べるため、正常胚発生の胎仔について、ファイブロネクチンの受容体分子であるインテグリンα5の発現を調べた。その結果、胎仔腸管での発現が認められた。一方、インテグリンα5に対する中和抗体を加えると、分化腸細胞の基質への接着が阻害されたため、ファイブロネクチンへの接着が腸上皮前駆細胞への分化促進作用を持つことが分かった。 2)腸炎モデルマウスの作成:腸炎モデルマウスについては、デキストラン硫酸ナトリウム投与によって腸炎を誘導した。この腸炎モデルマウスに分化細胞を投与し、投与した細胞を追跡できるようにするために、分化ヒトiPS細胞を蛍光色素で標識することにした。蛍光色素を用いた標識の条件について検討した。また、標識細胞をモデルマウスへ投与し、標識された細胞のモデルマウス腸管への組み込みについて検討を行なった。 3)腸管上皮の分化誘導方法の改良:将来、移植医療を目指すためには、分化細胞を量産する系を構築する必要がある。そのためには、分化誘導方法の改良を試みた。今回、分化を促進する化合物を見出した。その化合物を加えることにより、内胚葉への分化誘導効率が促進され、腸上皮前駆細胞への分化効率も大きく前進した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、分化誘導方法の改良と分化細胞の純化方法を探索した。その結果、内胚葉、そしてその次の段階の腸上皮前駆細胞への分化誘導効率が飛躍的に改良された。さらに分化誘導するのに必要な日数も短くなった。さらに分化細胞の接着の性質を調べた結果、ファイブロネクチンに強い接着性を示すことがわかったので、今後この性質を利用することで分化細胞を純化できることを見出した。 次年度では、これらの成果を元に、さらに分化の成熟化を検討する。得られた分化細胞の成熟度について、様々な観点から評価する。さらに分化した細胞を純化して、増幅方法についても検討する。腸炎モデル細胞に対する移植治療について検討を行なう。
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Causes of Carryover |
当初、低分子化合物ライブラリーを購入して、分化促進する化合物を探索することを考えた。しかし、手持ちの化合物を調べた結果、効果の高い化合物を見出すことが出来た。このため、低分子化合物ライブラリーの購入に充てた予算を次年度の研究に回して、最大限に予算を有効活用できるようになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度では、今年度の結果をもとに、分化の成熟化を検討する。得られた分化細胞の成熟度について、様々な観点から評価する。分化した細胞を純化して、増幅方法についても検討する。腸炎モデル細胞に対する移植治療について、検討を行なう。これらの研究を進めるための、分化成熟化に必要な成長増殖因子、ファイブロネクチン蛋白質の購入、増幅評価実験に必要なプラスチック培養器具の購入に充てたいと計画している。
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[Journal Article] Sexually dimorphic expression of MafB regulates masculinization of the embryonic urethral formation.2014
Author(s)
Suzuki K, Numada T, Suzuki H, Raga D D, Ipulan L A, Yokoyama C, Matsushita S, Hamada M, Nakagata N, Nishinakamura R, Kume S, Takahashi S and Yamada G.
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Journal Title
Proc. Nat. Acad. Sci.
Volume: 111
Pages: 16407-16412
DOI
Peer Reviewed
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