2014 Fiscal Year Research-status Report
タイチンアイソフォームの発現比率と拡張型心筋症の関係の解明
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26670398
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
黒柳 秀人 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (30323702)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | タイチン / スプライシング / 心筋症 / 受動的張力 / 細菌人工染色体 / 蛍光レポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
計画①AとしてTTNプラスミドレポーターミニ遺伝子におけるRBM20によるスプライシング制御のシスエレメントの同定を試みた。これまでに、ミニ遺伝子に含まれているTTN遺伝子の配列のうち哺乳類に保存された数塩基程度の短い領域5か所を個別に欠失させた変異型ミニ遺伝子を作製してRBM20と共発現させたが、蛍光レポーターのRBM20依存的選択的スプライシング制御に影響が出たものはなく、配列の保存性だけで必須のシスエレメントを特定するのは困難と思われた。 計画②として、TTN遺伝子選択的スプライシングレポーターBACミニ遺伝子の作製を計画していた。pBAC-TTNE50-E115-GGS6-mCherryはすでに完成していたことから、Flp-In TREx 293細胞で安定発現株の作製を試みた。ミニ遺伝子をゲノムに組み込んだと思われる細胞株を薬剤耐性マーカーを利用して数クローン作製したが、レポーターの蛍光の発現は期待どおりには確認できなかった。 計画③として、TTN遺伝子選択的スプライシングレポーターマウスの作製を計画していた。上述のようにレポーターBACミニ遺伝子での蛍光観察は困難と思われたことから、プラスミドレポーターミニ遺伝子に集中してマウス株を作製することとし、遺伝子組換えマウス作製に必要な書類審査を終えた。 当初計画していたもの以外に、核に局在できずTTNレポーターのスプライシングを制御できないS637A/S639A二重変異型RBM20に核移行シグナルを付加して核局在をある程度回復させたNLS-RBM20(S637A/S639A)では、スプライシング制御能を回復することを確認した。この結果は、これらのアミノ酸置換によるスプライシング制御能の喪失は、スプライシング制御への直接の影響というよりは細胞内局在への異常の二次的な効果であることを示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画①Aは、実験としては計画どおり行ったが、結果としてRBM20のシスエレメントの同定に至らなかった。一方、RBM20の細胞内での結合RNA領域の網羅的解析の論文がちょうど海外の研究グループからが発表され、我々が計画①Bとして同定しようとしていたTTN遺伝子領域についても、RBM20が多数結合することが示唆された。これは、RBM20による制御が特定少数の保存された短い配列に依存するものではないとする我々のレポーターの実験結果とも一致する。 計画②は、蛍光を指標にTTN遺伝子選択的スプライシングレポーターBACミニ遺伝子の作製を予定しており、実際N2BA型スプライシングでRFPを発現するミニ遺伝子については安定発現株を得るところまで進んだ。しかし、これらの株ではRFPの蛍光を観察できなかったため、BACミニ遺伝子を蛍光レポーターとして安定発現細胞株やレポーターマウスの作製に使う当初の計画は白紙に戻ることになった。 計画③として、TTN遺伝子選択的スプライシングレポーターマウスの作製を計画していた。受精卵へのインジェクションについては動物実験のための書類が揃わず年度内に間に合わなかったが、材料を揃えるところまでは到達できた。一方、当初計画にはなかったが、Flp-In TREx 293細胞を用いてTTNプラスミドレポーターミニ遺伝子の安定発現細胞株を数クローン単離し、そのうちのいくつかについて、蛍光タンパク質を発現していることを確認した。 当初の計画以外では、Ser637とSer639の変異によるRBM20のスプライシング制御能の喪失がスプライシング制御への直接の影響ではなく、細胞内局在異常による二次的な効果であることが確認できた。これらの結果から、変異型RBM20の核局在やスプライシング制御能の回復が薬剤スクリーニングの指標となり得ることを確認できたのはよい進展であった。
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Strategy for Future Research Activity |
計画①は、RBM20が結合するTTN遺伝子の領域がある程度特定されたことから、プラスミドレポーターミニ遺伝子で欠失変異体を作製して、RBM20によるスプライシング制御への影響を解析し、その領域の関与を検討する。 計画②のBACミニ遺伝子での解析は、HEK293T細胞への一過性トランスフェクションとRT-PCRによるスプライシングパターンの解析を指標として、制御領域やRBM20の機能の確認を進める。①のプラスミドレポーターミニ遺伝子で実験的に確認されたRBM20による制御領域について、その領域を欠失した変異型レポーターBACミニ遺伝子を作製し、よりゲノム配列に近いBACレポーターでのRBM20によるスプライシング制御への影響を解析する。 計画③は、BACミニ遺伝子についてはあきらめ、プラスミドレポーターミニ遺伝子を用いてトランスジェニックマウスを作製する。 計画④では、上記③のトランスジェニックマウスを利用する計画であるが、別途Flp-In TREx 293細胞から作製したプラスミドレポーターの安定発現株を利用して、N2B型スプライシングを促進または抑制する化合物のスクリーニングを試みる。 当初の計画以外では、Ser637とSer639の周辺アミノ酸配列がリン酸化を受けることが知られている配列に似ていることから、リン酸化特異的抗体を作製して細胞内でのリン酸化の有無を確認する。また、心筋症患者型変異によるリン酸化への影響について、リン酸化抗体によるウェスタンブロットや質量分析等により確認を行う。
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Causes of Carryover |
トランスジェニックマウスを作製するための委託料や作製したマウスの飼育料を予定していたが、培養細胞レベルで蛍光レポーターの発現が想定よりも暗い、あるいはほとんど検出できない程度のものであったため、BACミニ遺伝子を用いたトランスジェニックマウスの作製を断念した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
BACミニ遺伝子をあきらめ、代わりにプラスミドレポーターをトランスジェニックマウス用のベクターに乗せ換えて発現の確認等を行っている。培養細胞レベルでの発現確認は、順調に推移しており、新年度には当初のトランスジェニックマウスの委託の段階に進める予定である。
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Research Products
(3 results)