2014 Fiscal Year Research-status Report
転写調節因子を自在誘導できるESバンクを用いた腎尿細管ダイレクトリプログラミング
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26670432
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
伊藤 裕 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (40252457)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 腎臓 / 尿細管 / 転写調節因子 / ES細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
TF-inducible ES細胞データのin silicoスクリーニングによる尿細管細胞分化マスター制御因子の同定 当初、転写因子を自在に誘導できるマウスES細胞バンクを用いて尿細管分化に関わるマスター制御因子を同定しマウス尿細管細胞を分化誘導することを計画していたが、連携研究者の洪教授らにより転写因子を自在に誘導できるヒトES細胞バンクの充実が図られたため、ヒトES細胞バンクを用いることにした。 ヒトTF-inducible ES細胞バンクは、既に昨年度3月末で250遺伝子分完了しており、このデータベースを元に明らかとなった約30の転写因子の中にはヒト尿細管細胞への分化誘導が推察される新規転写因子を複数同定した。 修飾合成mRNA添加によるヒトES細胞由来尿細管様細胞の樹立技術開発 修飾mRNA合成のための鋳型となるヒト転写因子組み込み済みベクターを用いて修飾mRNA合成が150種類以上作成した。修飾合成mRNA遺伝子導入に関しては、複数の蛍光タンパク遺伝子を使った先行実験でも、有効性が確認できた。尿細管細胞のマスター制御因子の候補となる約30のヒト転写因子組み込み済みの修飾合成mRNAについても同様に作成し、まず単一因子のみでES細胞に導入し、ヒト腎上皮維持培地で培養したところ、PCRにて腎臓の尿細管全般に発現しているKSPの発現を促進する3-5の転写因子が明らかになった。特に、そのうちのひとつの転写因子はTF-inducible ES細胞を用いた実験で5日間の培養でKSPだけでなく、成熟尿細管細胞に発現するAQP1, AQP2, MEGALINといった特異的マーカーも確認できており、この転写因子を軸として複数の転写因子を組み合わせることでより成熟した尿細管様細胞が得られると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度内に分化誘導細胞の解析及び3次元培養を完了する予定であったが、現在、マスター制御因子の候補となるヒト転写因子を複数の修飾合成mRNAの形で導入する組み合わせを検討している段階にある。 連携研究者の洪教授らは、尿細管マスター制御因子の探索のためにTF-inducible ES細胞を用いてin silico解析を行い、既に昨年度3月末の時点でヒト転写因子250遺伝子分のトランスクリプトーム解析データを保有しているが現在さらにその数を増やし500遺伝子分を目標としているため、遺伝子発現情報データベースであるGEOとの比較が継時的にアップデートされており、新たなマスター制御因子の候補が増えている。そのため、その都度各因子の解析が必要となること、また最適な尿細管細胞誘導の条件検討のため、進捗が遅延している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、ES細胞バンクの充実に合わせて、TF-inducible ES細胞データのin silicoスクリーニングによる尿細管細胞分化マスター制御因子の同定をおこなう。 それとともに、すでに、修飾合成mRNA添加によるヒトES細胞由来尿細管様細胞の候補となる遺伝子が複数見つかっており、それらの解析を進めていく。
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