2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26670468
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
杉山 大介 九州大学, 先端医療イノベーションセンター, 特任教授 (00426652)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生理活性ペプチド / 造血幹細胞増幅 / 臍帯血 |
Outline of Annual Research Achievements |
造血幹細胞は多分可能と未分化性を維持しつつ増殖する自己複製能をもつが、その未分化性を維持するためのシステムは未解明である。申請者は造血幹細胞を制御するニッチ細胞から生理活性ペプチドを同定する技術を確立していることから、本研究では造血幹細胞を制御する新規物質として、胎生期幹細胞ニッチである肝芽細胞より“低分子生理活性ペプチド”を同定し、未来の幹細胞制御法開発へ向けた新規シーズの開発を目的とした。 すでに平成26年度に2種類の新規低分子ペプチドを同定しており、マウス胎仔肝臓造血幹細胞にペプチドを添加培養することにより細胞増殖が抑制される一方で、造血前駆細胞分画が増加することを明らかにした。平成27年度には、ヒトの細胞を用いたin vitro機能解析、ペプチドの作用機序解明、造血幹細胞制御法開発への応用可能性の検討を計画した。ヒトの細胞に対する新規ペプチドの作用を評価するため、ヒト臍帯血造血幹細胞を増加させる既知のペプチドを用いて培養条件の最適化を行った。将来的な橋渡し・臨床研究への発展を見据えて、当初使用を予定していた培地から、無血清かつ動物由来成分不含の培地へと変更し、細胞内へのペプチド取り込み、培養後の生細胞数、ヒトCD34陽性CD38陰性造血幹細胞分画の細胞数、コロニー形成能、遺伝子発現の評価を行い、培養条件の最適化を完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生理活性ペプチドを応用した将来的な橋渡し・臨床研究に関して、PMDAの再生医療審査担当者との面談を行った。面談において、ヒト造血幹細胞の培養培地については、当初予定していたStem Span SFEM(無血清増殖培地)からStem Span ACF(動物由来成分不含)への変更が推奨されたことから、培地を変更し、培養の最適化を行った。その結果、培地変更前の条件と同様にペプチドが細胞内に取り込まれることを確認し、培養9日後にはペプチド添加群においてヒトCD34陽性CD38陰性の造血幹細胞分画の細胞数が培養開始時の約55倍に増加すること、増幅した細胞がコロニー形成能を維持していることを確認した。以上の結果より、おおむね順調に進んでいると考えられる
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Strategy for Future Research Activity |
①至適条件で培養したサンプルを使用して、マイクロアレイ解析、リン酸化アレイ解析などを行い、ペプチド添加により変動する標的遺伝子・シグナル伝達経路を探索する。また、マイクロアレイ解析において、コントロールと比較して顕著な遺伝子発現の増加/減少が認められた上位各10因子に関して、real-time PCR法による遺伝子発現のvalidationを行う。マイクロアレイ解析と一致する結果が確認できた遺伝子に関して、該当遺伝子のプロモーター領域にペプチドが結合するか検討するため、ビオチン標識した低分子ペプチドを造血細胞へ取り込ませた後、抗ビオチン抗体を用いてChIPアッセイを行う。 ②低分子ペプチドとタンパク質レベルで相互作用・結合する因子を同定するため、ビオチン標識した低分子ペプチドを造血細胞へ取り込ませた後、細胞からタンパク質を抽出し、抗ビオチン抗体を用いて免疫沈降を行う。得られた免疫沈降物をSDS-PAGEで分離した後に銀染色を行い、ペプチド未添加のサンプルでは存在せず、低分子ペプチドを添加培養したサンプルにおいて存在するバンドを切り出し、LC-MS/MS解析を行う。解析の結果から、ペプチド添加条件のみに存在する候補上位10因子を選出する。 ③以上の検討により選出したシグナルの発現抑制実験を行い、当該シグナル経路における低分子ペプチドの機能解析を行う。
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Causes of Carryover |
ペプチドを応用した将来的な橋渡・臨床研究に関して、PMDAの再生医療審査担当者 へ相談した。その面談において、造血幹細胞の培養培地について、予定していたStem Span SFEM(無血清 増殖培地) からStem Span ACF(動物由来成分不含)への変更を推奨された。よって、ペプチド添加培養におけるStem Span ACFの生物学的同等性を検討する予定である。研究内容に変更はなく、研究の進展に伴って期間の延長が必要になった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
幹細胞にペプチドを添加培養し、幹細胞の性質を調べる。 至適条件で培養したサンプルを使用して、マイクロアレイ解析、リン酸化アレイ解析などを行い、ペプチド添加により変動する標的遺伝子・シグナル伝達経路を探索する。さらに、低分子ペプチドとタンパク質レベルで相互作用・結合する因子を同定するため、ビオチン標識した低分子ペプチドを造血細胞へ取り込ませた後、細胞からタンパク質を抽出し、抗ビオチン抗体を用いて免疫沈降を行う。
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