2014 Fiscal Year Research-status Report
新生児の自然免疫応答の解明を基盤としたRSウイルス経鼻ワクチンの開発
Project/Area Number |
26670514
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
齊藤 三佳 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40419700)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳原 大介 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60448751)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 新生児 / 自然免疫 / 臍帯血 / 感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は臍帯血を用いた新生児の自然免疫応答の解析をすすめ、成人と比較した新生児の自然免疫の未熟性は免疫担当細胞やTLR作動薬によって異なることを明らかにした(Nohmi K, Tokuhara D. J Pediatr 2015)。具体的には、臍帯血および成人血から分離した単球(Mo)、樹状細胞(DC)、単球由来樹状細胞(MoDC)をLPS (TLR4リガンド), Pam3CSK4 (TLR1/2リガンド), flagellin (TLR5リガンド), zymosan (TLR2リガンド), poly(I:C) (TLR3リガンド), imiquimod (TLR7リガンド), ならびに CpG (TLR9リガンド)を用いて刺激し、各種細胞から産生される炎症性サイトカインの濃度を測定した。LPS、Pam3CSK4、Flagellin刺激では、炎症性サイトカイン産生はMoにおいて成人血で高く、DCでは成人血と臍帯血間に差はなく、MoDCでは臍帯血が成人血よりも高い傾向にあった。poly(I:C)、imiquimod、CpGは成人血・臍帯血のどの種類の細胞においても炎症性サイトカインの産生は低値であった。一方、TLR2の作動薬であるZymosan(出芽酵母や真菌壁の多糖成分)は、成人血および臍帯血の各免疫担当細胞において炎症性細胞産生を誘導するとともに、臍帯血の各細胞における炎症性サイトカインの産生量が成人と同等であることを見いだした(Nohmi K, Tokuhara D. J Pediatr 2015)。これらの結果はZymosanが成人と同様の自然免疫応答を新生児に惹起しうることを示しており、Zymosanが新生児の効果的なワクチンアジュバントになりうることを示唆すると考えられる。以上の結果は国内外の学会で発表し、Journal of Pediatricsに受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は、酵母や真菌の壁の多糖成分であるZymosanが、単球・樹状細胞・単球由来樹状細胞において成人血と同等の免疫応答を臍帯血においても誘導できることを見いだし、論文として公表した(Nohmi K, et al. J Pediatr. 2015. in press)。同結果は、成人血と臍帯血の間の炎症性サイトカイン産生度の差が少なく、各TLRリガンドの中でサイトカイン産生能および細胞の成熟化の高いものをワクチンアジュバント候補として見いだすという、初年度(平成26年度)の目標を達成した。以上の理由から、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
TLR2はRSVの認識に関わり、TLR2を介したRSVに対する免疫応答が樹状細胞の活性化に重要な役割を果たす事が知られていることから(Murawski MR. J Virol 2009)、Zymosanが新生児の自然免疫を成人同等に活性化するという我々の知見は、RSVに対するワクチン開発に効果的に応用できると考えられる。したがって今後は、ZymosanをアジュバントとしたRSVワクチンの効果の検証をすすめていく。具体的には、幼若マウスに不活化RSVとZymosanを混合した経鼻免疫を行い、血液、唾液、肺・鼻腔洗浄液中のRSV特異的IgGおよびIgAを測定する。1960年代に開発され重篤な合併症を呈した不活化注射ワクチンは、Th2型サイトカインを介した好酸球の活性化がRSV自然感染による呼吸器疾患を増悪させた一因と考えられることから(J Immunol.1993:151:2032-2040)、本研究ではZymosanをアジュバントとしたワクチンが効果的に粘膜面に抗原特異的IgAを誘導するかどうかを検証するだけでなく、Th1サイトカイン誘導性のIgG2aを優位に産生するかどうかという点を確認する。
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Causes of Carryover |
試薬を節約したこと、本年度に計画していた研究を来年度に一部実施する事としたこと、参加を予定していた学会の参加日時の調整がつかず次年度に発表を持ち越すことになったこと、が挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
サイトカインアッセイ用の試薬に十分な研究費が必要なため,その測定に研究費を使用し、本年度に施行できなかった研究を円滑に実施するため使用する。また、積極的に国内外の学会での発表を行う。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Zymosan induces immune responses comparable with those of adults in monocytes, dendritic cells, and monocyte-derived dendritic cells from cord blood2015
Author(s)
Kyoko Nohmi, Daisuke Tokuhara, Daisuke Tachibana, Mika Saito, Yuko Sakashita, Akemi Nakano, Hiroyuki Terada, Hiroko Yamamoto, Masayasu Koyama, Haruo Shintaku
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Journal Title
Journal of Pediatrics
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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