2014 Fiscal Year Research-status Report
アトピー性皮膚炎の機序解明に向けた遺伝子改変NC/Ngaマウス作成システムの構築
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26670523
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
大沢 匡毅 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10344029)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アトピー性皮膚炎 / 疾患モデルマウス / ノックアウトマウス / トランスジェニックマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
NC/Ngaマウスは我が国で独自に樹立されたアトピー性皮膚炎様症状を自然発症するマウスであり、ヒト型疾患を再現できるモデル動物として病態の解析や治療法・治療薬の評価に広く活用されている。本マウスは優れたモデルマウスであるが、遺伝改変を行うことは困難であり、本マウスを用いて分子レベルで病態解析を行うことができないという重大な欠点がある。本研究では、このようなNC/Ngaマウスの欠点を克服するために遺伝子を改変したNC/Ngaマウスを簡便に作成する技術を構築することを目標とする。 本到達目標を達成するために、平成26年度は遺伝改変マウス作成を可能にするための技術的基盤を構築することに注力した。まず、NC/Ngaマウス胚盤胞を単離・培養することにより、ES細胞株を取得することに成功した。また、本ES細胞株を8細胞胚期のホスト胚に移植することによりキメラマウスを作成することができることを確認した。さらに、NC/Ngaマウスにおいて遺伝子をノックアウトまたは強制発現を行うシステムを構築するために、NC/Ngaマウス由来ES細胞においてCRISPR/Cas9システムを使用することにより特定の遺伝子座を破壊することおよび外来遺伝子をノックインすることを可能にした。次年度は、これらの遺伝子改変を行ったES細胞を用いて簡便に遺伝子改変マウスを作成する手法を構築することを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
① NC/Ngaマウスは繁殖効率が悪く、通常の方法により胚を採取し、ES細胞株を取得することが困難であった。そこで、本研究においては、人工授精によって受精卵を得る方法を採用し、その後、胚盤胞からES細胞株を得ることに成功した。 ② 樹立したES細胞株に対し遺伝子改変を行うために、CRISPR/Cas9システムを用いてIl13およびTslpの遺伝子座を破壊することを試みた。ES細胞に対するトランスフェクション法を最適化することにより、それぞれの遺伝子座について効率的にノックアウトを行うことができることを確認した。 ノックアウト効率は70%以上であり、この中には20~10%の割合でホモ接合体ノックアウトが認められた。 ③ トランスジェニックマウス作製のために、NC/Ngaマウス由来のES細胞のRosa26遺伝子座にPhiC31インテグレースattPドナーカセットをCRISPR/Cas9システムによりノックインした。その結果、80%以上の割合でノックインES細胞を得ることができた。この中には>25%の割合でホモ接合体ノックアウトが認められた。 以上の成果をもって、本プロジェクトは順調に推移していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、作製したES細胞をもとに遺伝子改変NC/Ngaマウス得ることに注力する。本プロジェクトでは、NC/Ngaマウス胚よりES細胞株を得ることには成功したが、本ES細胞は通常のES細胞に比して不安定性が認められる。このようなES細胞の不安定性は、ES細胞を用いてマウスを作製する際に、ES細胞由来のキメラ率低下やGermline Transmission効率の低下をもたらす可能性が推測され無視することができない。今後は、胚盤胞からES細胞を樹立する際の培養法について検討を行い、より安定的なES細胞を得ることを目指す。また、近年、マウス1細胞胚にCRISPR/Cas9のRNAを直接インジェクションすることによって遺伝子改変マウスを得る方法が開発された。本プロジェクトについても、このような1細胞胚へのマイクロインジェクション法を採用し、F0世代において遺伝子改変NC/Ngaマウスを得ることにより、遺伝子改変マウス作製の簡便化および迅速化を図る。 本プロジェクトでは、今後、Il13またはTslp 遺伝子をノックアウトしたNC/Ngaマウスを作製し、これらの因子がNC/Ngaマウスのアトピー性皮膚炎様症状発症に及ぼす影響を調べる。従来の研究からこれらの因子はアトピー性皮膚炎の発症や悪性化に重要な役割を果たしていることが示唆されているが、ヒトと同様な自然発症の条件下においてもこれらの因子が病態の発症に重要な役割を果たしているのかを検証する。
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Causes of Carryover |
平成26年度は、NC/Ngaマウスの繁殖能が低いという予想外の問題点に直面し、この解決のためにIVFによって胚を作製する方法を採用した。その結果、NC/NgaよりES細胞を得ること多くの時間を使い、ES細胞からマウスの作製を作製することにおいて若干の遅れが生じた。そのため、マウス作製のための費用を次年度に計上することになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は当初計画通り予算を使用する予定である。
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