2014 Fiscal Year Research-status Report
統合失調症の大脳皮質抑制性介在ニューロン変化におけるGABA受容体遺伝子の役割
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26670536
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
橋本 隆紀 金沢大学, 医学系, 准教授 (40249959)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 脳神経疾患 / 遺伝子改変マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
統合失調症の大脳皮質では、パルブアルブミン(parvalbumin, PV)を発現する抑制性介在ニューロンのサブタイプ(PVニューロン)にて、その機能異常を示す所見が多く報告され、認知機能障害の病態生理に関与していると考えられる。本研究では、このようなPVニューロンの変化が、発達過程におけるGABA-A受容体α1サブユニットの発現低下により生じるという仮説を、マウスにおける時期特異的遺伝子不活化により検証する。 本年度はまず時期特異的に遺伝子不活化を誘導する系を確立するためGABA合成酵素であるGAD67をコードするGAD1遺伝子の一部が遺伝子組み換え酵素Creの認識するloxP配列で挟まれたfloxed-GAD1マウスと、遺伝子組み換えCre酵素遺伝子と改変プロゲステロン受容体遺伝子を含む遺伝子断片(Cre-PR)を発現するマウスを交配し、プロゲステロン受容体に作用するRU486投与によりCre遺伝子の発現を誘導し、GAD1遺伝子の不活化を試みた。生後28-32日の発達期にあるマウスにRU486 (0.5mg/g body weight/day)を4日間連続で投与し、生後56日でマウスの脳より切片を作成し前頭前野にてGAD1 mRNAの発現をCre-PR遺伝子を発現するマウスとそうでない同性同腹のマウス(各5匹)の間で比較した。GAD1 mRNAの発現量は、Cre-PR+マウスで0.68±0.07(uCi/g)でCre-PR-マウスで0.61±0.06(uCi/g)であり、有意な差は検出されなかった(t4=2.8, P=0.19)。RU486は水溶性が低いことから、界面活性剤を含む生理食塩水に懸濁して、効果が発現することが報告されている量を腹腔投与した。しかし体重あたりの投与量が多く、投与後にマウスが死亡することもあった。このような高容量でも遺伝子不活化の効果は認められなかったことから、導入したCre-PR遺伝子を介して時期特異的に遺伝子発現を不活化することは困難と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
RU486の投与方法の確立に時間がかかったことと、実験に用いたマウスが途中で死亡し、実験条件の再検討が必要になったことなどで遅れが生じた。このような時期特異的な遺伝子発現不活化の誘導は困難であることが判明し、実験の進行が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は時期特異的なノックアウトではなく、GABA-A受容体α1サブユニットをコードするGABRA1遺伝子の通常のノックアウトマウスを入手する。このマウスでは発達の初めからGABA-A受容体α1サブユニットの発現が低下しており、発達期におけるこの受容体の発現低下がPVニューロンに及ぼす影響を調べる目的のためには有用と考えられる。GABRA1ノックアウトマウスと同性同腹のマウスが成熟後に脳を取り出し前頭前野にてPVニューロンに発現し、統合失調症で発現低下が報告されているPVやGAD67などの発現を評価する。
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Causes of Carryover |
時期特異的な遺伝子ノックアウトの実験系が確立できず、その後予定していた解析に必要な費用が生じなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
GABRA1遺伝子の通常のノックアウトマウスを入手し、統合失調症における大脳皮質PVニューロンの変化に関連した遺伝子の発現を放射活性でプラベルされたプローブを合成しin situ hybridization法で定量評価する。
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