2014 Fiscal Year Research-status Report
時計遺伝子発現解析に基づいた概日リズム性睡眠障害治療のための基盤研究
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26670543
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
明石 真 山口大学, 時間学研究所, 教授 (30398119)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 概日時計 / 概日リズム / 時計遺伝子 / 睡眠障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、私たちが開発してきた概日時計診断法の技術的改良を進めた。ヒトで概日時計の診断を行うためには、時計遺伝子の発現リズムにおける位相決定を簡易に行う必要がある。そこで、本測定の基盤であるリアルタイムPCR法による発現定量法おいて、サンプル採取・RNA精製・逆転写・PCR増幅および検出等のそれぞれの実験操作について条件の最適化を行うことで、従来の方法よりも測定感度を上昇させることを目指してきた。従来の方法においては、被験者一人当たり少なくとも20本以上の体毛(主に頭髪)を数時間ごとに採取しており、被験者のみならず採取側にも負担が大きかった。それでもなお測定できない被験者が存在する場合もあり、診断法として不安定と言わざるを得なかった。しかし、今回の最適化によって、10本以内の採取によってほとんどすべての被験者において測定が成功するようになった。抜き取った毛根への生細胞の付着が十分量確認できる場合は、1本の採取毛根でも測定が十分可能であることも確認できており、本測定法の臨床診断法としての確立に大きく近づいたということができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本課題の目的通り、私たちの概日時計診断法の技術的改良を実施して、より信頼性の高い測定法として改善することに成功した。すなわち、私たちの期待を超えた測定感度の上昇が達成できており、今後の臨床応用実験を推進するにおいて、より精度の高い位相推定が実施できるものと期待している。私たちの実験法には特別な技術や装置を必要としないため、多くの研究者が速やかに採用可能な測定法である。 しかしながら、現時点において健常被験者の実施数が多くないために、「健常人の時計遺伝子発現リズム位相」を定義するには至ってはいない。したがって、この点については研究の進行が少し後れていると言わざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進において最大の壁となるのは、睡眠障害を患う被験者を十分数確保することである。被験者が多数必要になるだけではなく、被験者の様々なバックグラウンド(年齢や性別など)への配慮が必要である。また、現状では体内時計位相推定の実績が十分に多くはないために、実施環境の影響をどの程度受けるかわかっていない。そのため、生活習慣や生活環境においてある程度の制限をかけることで、被験者間において測定結果に対するノイズとなりうる諸要因を排除して、測定を実施する必要がある。 これらの解決のために、概日リズム性障害者が入院している病院と連携して被験者をリクルートすることを模索してきた。現時点において連携病院が見つかっており、当初の予定よりも規模の大きい試験を実施できる見込みである。
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Causes of Carryover |
実験進行に後れが生じているため、研究費の一部を次年度に繰り越さざるを得なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
概日時計診断に必要な実験消耗品や試薬に同繰り越し経費をあてる計画である。
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