2016 Fiscal Year Annual Research Report
Research on cost-effectiveness in standard treatment for major depressive disorder
Project/Area Number |
26670544
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
山田 和男 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (70255553)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 月経前不快気分障害(PMDD) / EQ-5D / 質調整生存年(QALY) / 生活の質(QOL) / 直接コスト / 増分費用対効果(ICER) / 費用対効果受容曲線(CEAC) / 支払意思額 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、前年度までに大うつ病性障害の診断基準を満たす症例のデータが予定をはるかに下回る数しか集まらなかったことより、同じ抑うつ障害群(DSM-5)の中でも比較的多くの症例のデータが集積した月経前不快気分障害(premenstrual dysphoric disorder:PMDD)の患者に対象を変更して、研究を継続した。具体的には、うつ病の近縁疾患であるPMDDのDSM-5の診断基準を満たす患者のうち、初診時に未治療であり、かつ初診時と6月経周期後(治療6ヶ月後)の双方においてEQ-5Dのデータを取得できた43例を対象として、生活の質(QOL)の低下の程度と、治療によるQOLの改善の程度、治療の費用対効果を検討するための後方視的研究を行った。 セルトラリンやエスシタロプラムなどの選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などによる、6ヶ月間にわたる薬物療法を行うことにより、1月経周期あたりのEQ-5D得点は、薬物治療開始前と比較して0.190の増加を認めた。すなわち、PMDDの患者に対して薬物療法を行うことによって、質調整生存年(QALY)は平均で約0.2年の改善を認めると予測された。また、1年あたりの平均直接コストは、約156千円/患者であった。PMDDを治療することによる社会的効用は、約823千円/QALYと計算された。 治療薬として多く用いられた薬剤はセルトラリンとエスシタロプラムであったことから、増分費用対効果(ICER)のブートストラップ推定と費用対効果受容曲線(CEAC)の描出はこれら2つに薬剤に関して行った。治療による効果と治療によってかかった直接コストから得られたICERをもとにCEACを描出したところ、1QALYあたりのwillingness to pay(支払意思額)が400万円を超える場合はエスシタロプラムが優れ、200万円を下回る場合はセルトラリンが優れる傾向が示唆された。
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