2015 Fiscal Year Research-status Report
非ステロイド性抗炎症薬が放射線被ばくによる心筋梗塞の発生頻度に及ぼす影響の解明
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26670547
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
細井 義夫 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50238747)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 放射線 |
Outline of Annual Research Achievements |
原爆被爆者等の疫学調査では心筋梗塞や脳梗塞のリスクが閾値なしで直線的に増加し、1mSv以上被ばくした原爆被爆者に発症した心筋梗塞は厚生労働省により原爆症と認定される。福島原発事故では、1mSv以上外部被ばくした住民は148,685人におよび、放射線被ばくによる心筋梗塞・脳梗塞の予防が重要となる。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が血管内皮の損傷を促進するという報告があり、心筋梗塞後のNSAIDsは再発のリスクを高め、インフルエンザ脳症のリスクを高める。本研究では、放射線による心筋梗塞の原因の一つとされる血管内皮細胞のTNF-α、E-セレクチン、ICAM1、VCAM1の発現亢進が、NSAIDsによって亢進するかどうかを検討する。発現が亢進する場合には、NSAIDsの内服を禁止することで、被ばくによる心筋梗塞のリスクを低減できる。臍帯由来の培養ヒト血管内皮細胞を用いて、ICAM-1、VCAM-1、E-selectinの発現に及ぼす10 Gy照射の影響を検討した。実験の結果、放射線照射後6時間後に一過性にICAM-1の発現が亢進したが、VCAM-1とE-selectinの発現は放射線照射による影響を受けなかった。次に5種類のNSAIDsを用いて、放射線によるICAM-1の発現亢進に与える影響を検討した。実験の結果、5種類のNSAIDsのうち、4種類でICAM-1の発現亢進が認められた。最も相乗効果が高かったNSAIDsを用いて、ICAM-1発現亢進に及ぼす放射線線量依存性を調べた結果、5 Gy以下では有意な変化は認められなかった。これらの結果は現在投稿準備中である。培養細胞で得られた結果がin vivoで確認できる可能かを目的として、アポEノックアウトマウスを用いて実験を行う。昨年度にアポEノックアウトマウスをアメリカから輸入して東北大学で飼育を開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト血管細胞を用いて、血栓形成の原因となり得るICAM-1の発現が放射線により誘導され、その発現が一部のNSAIDsによる亢進することが明らかとなり、研究は順調に進展している。また、研究経過の公表のため、論文作成を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)アポEノックアウトマウスを用いた放射線照射が動脈硬化に及ぼす影響の検討:動脈硬化のモデルマウスであるアポEノックアウトマウスを用いて、放射線による動脈硬化の影響を検討する。これまでにアポEノックアウトマウスを用いて、放射線照射後に動脈硬化が亢進するとした報告が既にある。昨年度にアポEノックアウトマウスはアメリカから輸入し、現在東北大学でブリーディングを行っている。今年度はアポEノックアウトマウスを使用して、放射線照射が動脈硬化に及ぼす影響を検討する。 (2)アポEノックアウトマウスを用いた放射線照射による動脈硬化亢進に及ぼすNSAIDsの影響の検討:アポEノックアウトをマウスを用いて放射線照射による動脈硬化の亢進が確認できた場合には、NSAIDsによる影響を検討する。NSAIDsは腹腔内に投与する予定である。 (3)NSAIDsが血管内皮細胞の放射線致死感受性に及ぼす影響の検討:放射線による動脈硬化の原因としては、ICAM-1の発現亢進による血栓の形成促進が原因として考えられるが、その他にも放射線照射による細胞死を増加させている可能性が考えられる。一般にNSAIDsは放射線増感効果を持つことが報告されており、本研究ではICAM-1発現亢進が認められたNSAIDsを用いて、血管内皮細胞における放射線致死感受性に与える影響を検討する。 (4)NSAIDsが細胞の放射線感受性に及ぼす影響の情報伝達経路の解明:NSAIDsに放射線増感作用があるとする報告があるが、その情報伝達経路に関しては報告がない。NSAIDsの放射線増感作用と放射線によるICAM-1発現亢進作用には共通の機序がある可能生がある。ICAM-1発現亢進作用を考慮しながら、NSAIDsによる放射線増感作用の情報伝達経路を解明するための研究を進める。
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Causes of Carryover |
昨年度は、細胞、抗体、ウエスタン関連試薬、培養用試薬、培養用ピペット等について、研究室にあったものを用いたため、新規購入が少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度以降はノックアウトマウスの実験を行うため、多くの経費を必要とする。また、血管内皮細胞の購入の必要性もあり、十分な研究経費が必要となる。
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Research Products
(4 results)