2015 Fiscal Year Research-status Report
エピジェネティック制御によって難治性がんの重粒子線感受性を増強させる
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26670566
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Research Institution | Takasaki University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
斎藤 克代 高崎健康福祉大学, 薬学部, 助手 (90455288)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 孝 高崎健康福祉大学, 薬学部, 教授 (00326852)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 重粒子線 / 重粒子線治療 / エピジェネティック制御 / ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤 / HDACi / 増感剤 / 感受性 / 併用効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
重粒子線は高LET(Linear Energy Transfer:線エネルギー付与)で生物学的効果比が大きく、細胞致死効果が高い。また、物理的にも線量集中性に優れていることから、がん組織だけをピンポイントで狙って死滅させることができる。これまでに研究代表者らは、難治性がんの培養細胞を用い、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(Histone Deacetylase inhibitor:HDACi)が重粒子線感受性を顕著に増強しうることを見出してきた。そこで本研究では、各種HDACiの重粒子線増感効果を明確にするとともに、重粒子線治療の効果を可視化により評価できる実験的イメージング解析系を開発することを目的とした。今年度は、前もって各種HDACiに曝露した悪性黒色腫細胞株に重粒子線またはガンマ線を照射し、様々なタンパク質の発現解析を行った。その結果、HDACiの放射線増感効果は重粒子線との併用で顕著だったにも関わらず、DNA損傷のマーカーであるH2AXのリン酸化はガンマ線との併用においてのほうが増加していることがわかった。重粒子線との併用のほうがHDACiのリン酸化が少ないにも関わらず抗腫瘍効果が高いことから、重粒子線との併用によって生じたDNA損傷は修復しにくい可能性が示唆された。一方、重粒子線治療の効果を可視化により評価するためのプローブ作製に関しては、DNA二本鎖切断応答に関わる2つの因子に分割型発光タンパク質を融合させたプラスミドを昨年度構築した。今年度は各因子の発現を確認する実験を行ったが、残念ながら一部の因子で発現を確認することができなかったため、構築戦略を再検討中である。本研究の成果は、重粒子線治療の効果をさらに促進する具体的な薬物を提案できるに留まらず、漸進的な免疫賦活化が期待できるため、遠隔転移病巣を含む進行がんの画期的な治療戦略となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は各種タンパク質の発現解析を行った。HDACiと重粒子線の併用は、ガンマ線との併用より増感効果が大きいにも関わらず、DNA損傷のマーカーであるH2AXのリン酸化はガンマ線との併用でのほうが増加していた。この結果は、増感効果と損傷の程度が直接関連していないことを示唆しており、大変興味深い。ぜひ今後、もっと掘り下げて研究したい。一方で、DNA二本鎖切断応答の可視化プローブの作製については戦略の再検討中であり、やや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
HDACiの重粒子線増感機序をより詳しく調べるために、タンパク質発現解析をさらに進める。DNA二本鎖切断応答の可視化プローブの作製よりも、HDACiによる重粒子線増感効果の検討のほうが興味深い結果を得られているので、最終年度となる次年度は後者に注力したい。
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Causes of Carryover |
当初、技術的に実験がうまくいかず、その原因究明に時間を費やしたため、予定していた実験量がこなせなかったから。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
細胞学的実験および分子生物学的実験に用いる試薬を購入する。
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