2014 Fiscal Year Research-status Report
シリコン中空糸のコンプライアンスを利用した長期使用人工肺の基礎研究
Project/Area Number |
26670576
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 裕輔 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90193010)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 人工肺 / シリコン中空糸 / コンプライアンス効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、シリコン中空糸を用いた内側灌流型人工肺を設計開発し、血液の脈動やガスのポンピングによるコンプライアンス効果および中空糸内部を抗血栓性コーティングすることによる効果などを検討し、一年程度使用できる人工肺の実現可能性を検討することを目的とする。本年度は基礎実験用の人工肺の設計と性能試験および血液に脈動を与えた場合の効果の検討を行った。まず、数値流体解析ソフトを使用し、血液流入口から中空糸の入口までの最適化を行ったところ、血液流入口から中空糸への流入部の外側にかけて発生する渦を改善する必要があることがわかった。次に、透析用ダイアライザーに使用される容器にシリコン中空糸を内蔵した試作人工肺を用いて、圧損失の測定と酸素化性能試験を行った。シリコン中空糸の膜厚は50μm、膜面積は約0.5 m2とした。試作した人工肺の圧力損失は、流量0.5 l/minで141 mmHgと想定より少し大きな値となった。また、市販の遠心ポンプおよびブタ血液を用いて、0.3 l/minの連続流量で行った酸素化能試験はPaO2が690 mmHg、PaCO2は45 mmHgと臨床でも使用可能な値を示した。また平均流量が同じになるようにして、拍動流で駆動して血液に50から60 mmHgの脈圧を与えたところ、PaO2が459 mmHg、PaCO2は28.6 mmHgと逆の効果が見られた。これは、市販の遠心ポンプでは十分な拍動流が作れなかったこと、もしくは人工肺への流量が少なかったことなどにより、シリコン中空糸に期待するほどのコンプライアンス変化を与えることができなかったためと考えられた。また、ガスをポンピングする方法に関しては、現在、ガス側を電磁弁で制御するための制御装置およびプログラムは完成している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
基礎実験用人工肺の試作に時間がかかってしまったために、試作人工肺を用いた基礎研究が十分にできなかった。加えて、血液の脈動によるコンプライアンス効果を確認するためには、市販の遠心ポンプ駆動装置では制御性が悪いことがわかり、制御性のよい駆動回路が必要であることがわかった。また、ガスをポンピングする方法に関しては、既に装置は完成しているので、来年度早々には実験に着手できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
血液の脈動によるコンプライアンス効果を確認するために、制御性のよい駆動回路を製作して、流量と拍動流の条件とシリコン中空糸のコンプライアンス変化、およびコンプライアンス変化に伴う酸素化能の変化などの詳細な検討を行う予定である。また、ガスをポンピングする方法に関しては、試作人工肺を使用して酸素化能試験を行い、同様のパラメータに関して検討を行う。並行して、数値流体解析により人工肺を改良する。このとき、電磁弁の開閉周期、SD比、ガス流量で結果が変化することが予想されるので、有効なコンプライアンスを得るのに最適な条件を検討する。ある程度の実験データが揃い次第、抗血栓性コーティングを施した人工肺を試作し、ヤギを用いた動物実験を実施する。
|