2014 Fiscal Year Research-status Report
循環癌細胞から見た膵癌の上皮間葉転換(EMT)の制御と治療への応用
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26670594
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
海野 倫明 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70282043)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 腫瘍循環細胞 / 上皮間葉移行 / Wntシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、循環腫瘍細胞の検出・解析技術が開発、研究が進められているが、腫瘍循環細胞中にはある割合で、上皮系の性質を失った、いわゆる「EMT」を起こした癌細胞が含まれていることが報告されている。間葉系の性質を獲得した癌細胞では、細胞周期は長くなり増殖は遅くなることが知られており、これまでの代謝拮抗約、核酸アナログ製剤による殺細胞効果は一般に期待できないとされる。腫瘍循環細胞におけるEMT制御機構の解析から、接着・浸潤による再発病巣形成の制御が可能であるか明らかにすることを目的とする。 本年は、主に培養細胞を用いてReversing EMTに関する研究を行った。膵癌細胞Panc1においてWntシグナルをブロックすることで E-カドヘリンの発現上昇、およびビメンチンの発現低下を認め、機能的にも移動能・浸潤能が低下していた。この時、Snail, Slug TwistなどのEMTマーカーも低下することが確かめられた。すなわち、Wnt シグナルの下流で “Reversing EMT”が制御されうることが示された。さらに循環腫瘍細胞の転移系性能にHIF-1αの発現が深く関与すること、HIF-1シグナルとWnt シグナルの間にクロストークが存在することから、低酸素環境下でのHIF1αの誘導とWntシグナル、EMTとの関連について検討を開始した。現在低酸素下での実験環境について準備が完了し、培養細胞でHIF1αが誘導されることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績にも記載したように、膵癌培養細胞を用いて、Wnt シグナルの下流で Reversing EMTが制御されうることを示すことができた。さらに、低酸素下の実験で、低酸素環境下でのHIF1αの誘導とWntシグナル、EMTとの関連について検討を行った。今後得られた知見を、腫瘍循環細胞におけるReversing EMT、転移形成能の研究に応用していきたい。 しかしながら、膵癌臨床検体での腫瘍循環細胞の検討までは行うまで到らなかった。腫瘍循環細胞に関する研究は世界的に急速に進んでいる。当初予定していた磁気ビーズ標識モノクローナル抗体を用いた検出分離法より、さらに効率よく分離する方法が開発されており、現在、検出分離法について検討を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、研究実績に記載した研究について発展させるべき研究を継続していく。とくにWntシグナルとHIF1シグナルのクロストークについては、海外で報告も少なく、EMT、転移形成能との関連を調べることはオリジナリティーの高い研究に発展する可能性がある。 さらに、遅れている部分である腫瘍循環細胞の検出分離に関しても、問題を解決しつつ進めていきたい。
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