2014 Fiscal Year Research-status Report
スーパーアパタイト超微細粒子を用いたICGによる固形腫瘍のイメージング診断の開発
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26670601
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大橋 朋史 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (20723620)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / インドシアニングリーン(ICG) / イメージング / 固形腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
核酸のデリバリースステムとして開発されてきたスーパーアパタイト超微細ナノ粒子を、試薬を内包されていない空のsCAを先に担癌マウスに静脈投与した、インドシアニングリーンを腹腔内投与という、両試薬別ルートの投与であっても、マウス皮下固形腫瘍においてICGの集積が確認できたため、試薬を内包することなく、新たな空sCAを用いた画期的なICGによる腫瘍イメージング法考案した。この現象のメカニズムの解明のために、平成26年度では一連の細胞および動物実験を実施し、以下の成果が得られた。①腫瘍の間質液圧が他の正常組織よりも高く、抗がん剤が腫瘍に達しても深部に浸透できない原因となっている。我々もこのIFPに注目し、空sCAを静脈投与して高い腫瘍IFPを下げてICGの浸透を高めるという仮説の元で、マウス固形腫瘍モデルにsCAを静脈投与したのち、経時的固形腫瘍のIFPをカテーテルを用いて測定した。IFPは投与前に比べて、投与2~4時間後では有意に減少し、投与10時間以降では有意差がなくなった。②腫瘍が高いIFPを有しているのは、癌細胞が膜表面でintegrin β1を発現して、細胞外マトリックスタンパクと緊密に接合していると言われている。また細胞実験では、培地のCa濃度を増やすことで、integrin β1の発現を抑え癌細胞の接合を緩ませることができたという報告もある。我々は①ように空sCAを担癌マウスに静脈投与して、投与4および8h後の固形腫瘍中のIntegrinβ1を免疫染色したところ、controlより4および8h後では、Integrinβ1蛍光強度が有意に減少した。③in vivoにおいて確認したこの現象を、in vitroにおいて再現できるか、大腸がん細胞株を用いて確認した。両細胞株に、空sCAを添加して24h培養後、ドキソルビシン添加24h後に、フロサイトメトリーにして細胞内のDOXの取り込みを測定した結果、HCT116では約1.8倍、FaDuでは約3.4倍のDOXの取り込みの向上が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画以上に進展した。 腫瘍の高い間質液圧(IFP: Interstitial Fluid Pressure)が原因で、抗がん剤やナノ粒子を含むあらゆる薬剤が固形腫瘍の深部まで浸透できず、期待された治療効果を発揮できていない。世界はIFPを下げるために、様々な分子試薬を開発してきた。メカニズムは不明だが、腫瘍壊死因子(TNF-α)と併用することで薬剤の腫瘍浸透性が向上しり、細胞外マトリックス分子を抑えるトランスフォーミング増殖因子(TGF-β)を併用することで、浸透しにくいナノ粒子(100nm)も腫瘍の深部まで到達できたとの報告がある。 我々も同様のアプローチをして、空sCA静脈投与後の腫瘍におけるサイトカインの変動を調べたが、報告されているサイトカインに関しては著しい変化がなかった。しかし、sCA静脈投与後、数時間内において、固形腫瘍中のintegrinβ1の発現が減少し、実際ほぼ同じタイミングにおいて、高い腫瘍IFPも有意差を持って減少したことを突き止めた。 これは、in vivoにおいてまだ報告されていないメカニズムであり、sCA(i.v.)+ICG(i.p.)という両試薬別ルートの投与であっても、マウス皮下固形腫瘍においてICGが集積するという画期的な現象を解説するために、非常に意義のある成果である。 世界はドラッグデリバリーシステム(DDS)の開発に力を入れているが、固形腫瘍の環境を改善しない限り、どれだけ精密に設計されたDDSであっても、期待される抗腫瘍効果が得られない。今回発見した、空sCAによるintegrinを介した固形腫瘍IFPの減少というメカニズムは、今後DDSの開発をする上で重要な参考指標になり得る。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の計画では、「メカニズムの解明」をメインとしていたが、ほぼクリアできた。しかし、in vivoおよび vitroにおいて、以下の実験を追加して、さらなる解明を進める。①sCA中のカルシウムか、リン酸か、それとも炭酸か、つまりどの無機成分が固形腫瘍中のintegrin β1発現を抑え、IFPの低減に繋がったのか、追加実験を行う必要がある。空sCAを担癌マウスに静脈投与したのち、経時的に固形腫瘍中の無機成分を各種キットを用いて、定性定量的に解析を行っていく。②vivoと同じように、vitroにおいてもsCA添加後、細胞と細胞外マトリックス間のintegrinβ1および細胞間同士の接合因子の変動を、integrinβ1およびE-cadherinの抗体を用いて、蛍光免疫染色法にて解析する。以上のメカニズムの追加解析ののち、以下の応用実験を行う。③in vivoにおける空sCA(i.v.)+ICG(i.p.)イメージング法の、薬物動態、薬物力学の解明として、正常マウスを用いて、理論上同量のICG(i.p.)と空sCA(i.v.)+ICG(i.p.)をいろいろの濃度で投与し、経時的に採血して、薬物動態と薬物力学の評価を行う(PKパラメーターは、ノンコンパートメンタル解析(WinNonlin standard software)を用いて計算し、AUC、最大Pt濃度(Cmax)、Cmax到達時間(Tmax)、全身クリアランス(CLtot)、消失半減期(t1/2z)、定常分布容積(Vss) 、などのパラメーターを得る。④癌微小転移マウスモデルにおける、空sCA(i.v.)+ICG(i.p.)イメージング法の検討として、肝転移ヒト大腸癌細胞株(KM12sm)を用いた肝転移マウスモデル、あるいはヒト大腸癌細胞株(HT29)を用いた腹腔膜播種モデルにおいて、空sCA(i.v.)+ICG(i.p.)と投与後、in vivoおよびex vivoのIVISイメージングを行う、癌微小転移部の可視化の可否を検討する。
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Causes of Carryover |
今年度に必要な物品を購入したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度に必要な物品を購入するため。
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