2014 Fiscal Year Research-status Report
癌リプログラミングによる大腸発癌モデルにおけるエピジェネティクス修飾の役割解明
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26670605
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山本 浩文 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30322184)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | microRNA / CPC-Apcマウス / リプログラミング / エピゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸癌自然発生マウスを使用し、発癌の過程におけるmicroRNAによる癌リプログラミングの影響を調べることを目的とした。リプログラミングを誘導するmicroRNAとしては、microRNA-302a, microRNA-302b, microRNA-302c, microRNA-302d, microRNA-369-3p, microRNA-369-5p, microRNA-200cの7種類を使用した。マウスは2007年にHinoiらが報告したCDX2P-NLS Cre;Apc+/loxpマウス(CPC-Apcマウス)を用いた ( Hinoi T, et al. Cancer res. 2007) 。 CPC-Apcマウスに、8週齢から15週齢まで週3回のペースで合計24回、上記7種類のmicroRNAを25ugずつ尾静脈より投与した。Drug delivery systemとしては、2015年に我々が報告したSuper carbonate apatiteを使用した。癌化の過程の観察として、小動物用大腸内視鏡検査を9週齢、13週齢の時点で施行し、15週齢で解剖して大腸の正常粘膜、腫瘍を摘出した。 造腫瘍能の評価として腫瘍個数を比較したところ、microRNA投与群はmicroRNA非投与群と比較して有意に少なく、7種類のmicroRNAを投与することによる腫瘍抑制効果が明らかになった。現在、microRNA投与群、microRNA非投与群それぞれの正常粘膜と腫瘍のRNAを、遺伝子発現マイクロアレイ、microRNAマイクロアレイに提出し、現在解析を行っている。 microRNAによる腫瘍抑制効果は、家族性大腸腺腫症患者の癌の予防、発症時期の遅延や、散発性大腸癌の予防に繋がる可能性があり、実地臨床への発展も視野に入れて、今後メカニズム解析を含めた研究をさらに進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CPC-Apcマウスに対するmicroRNAの投与は、我々の報告をベースに、リプログラミングを誘導するmicroRNA-302a, microRNA-302b, microRNA-302c, microRNA-302d, microRNA-369-3p, microRNA-369-5p, microRNA-200cの7種類で行った。当初平成26年度に予定していたin vitroの「マウス大腸癌細胞における癌リプログラミング療法の検討実験」は行っていない。8週齢から15週齢までの8週間、週3回の合計24回、マウスへの投与を行い、現在解析中である。平成26年度の研究成果として、腫瘍形成に関する評価、遺伝子発現マイクロアレイ(解析中)、microRNAマイクロアレイ(解析中)が完了している。マイクロアレイについては、大阪大学微生物病研究所と共同研究契約を締結し、マイクロアレイを専門に取り扱う部門とタイアップすることによって、効率的に解析を進めていくこととした。解析が終了し次第、validationの実験に取り掛かる予定である。エピゲノム変化はDNAメチル化、ヒストン修飾、クロマチン構造の変化、microRNAの網羅的な解析を予定しており、具体的には、まずメチル化DNAシーケンスによるエピゲノム解析を平成27年度に予定している。 研究の順序こそやや前後しているものの、着実にデータが蓄積されつつあり、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
リプログラミング誘導microRNAの投与による腫瘍抑制効果は、腫瘍発生個数の抑制として示すことができたが、腫瘍サイズが小さいため、腫瘍重量や腫瘍径などの評価は行うことができなかった。再度同様の実験系を行うことにより、同様の変化がみられるかの確認とともに、評価できなかった項目についても検討することが必要と考えている。 現在、microRNA投与群、microRNA非投与群それぞれの正常粘膜と腫瘍に関して、遺伝子発現マイクロアレイ、microRNAマイクロアレイに提出し、解析を行っている。まず前述の7種類のmicroRNAを投与したことによって変動する遺伝子を同定することとした。変動した遺伝子のQuantitative RT-PCR、その遺伝子が標的とするタンパクの発現について免疫組織学的染色を行い、マイクロアレイのvalidationを行う。その結果に基づいてUpstream解析を行うことで、どのようなpathwayが変動しており、投与したmicroRNAがそのpathwayに対してどのように作用したかを明らかにする。また、その遺伝子がヒト大腸癌においてどのような発現パターンを示すかについても、当教室で前向きに採取、保管しているヒト臨床サンプルを用いて解析することを予定している。 エピゲノム変化の評価については、ここまでの過程で得られた遺伝子発現の結果に基づいて行うこととした。エピゲノム変化はDNAメチル化、ヒストン修飾、クロマチン構造の変化、microRNAを網羅的に解析することを予定しており、DNAメチル化についてはメチル化DNAシーケンス、ヒストン修飾は次世代sequencing技術によりゲノムワイドにヒストンメチル化やアセチル化修飾パターンを調べることを予定している。
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