2015 Fiscal Year Research-status Report
脊髄虚血に対するナノバブル発生技術を応用した脊髄液酸素化による脊髄保護法の開発
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26670615
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
秋山 正年 東北大学, 大学病院, 講師 (80526450)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本吉 直孝 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (40375093)
齋木 佳克 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50372298)
熊谷 紀一郎 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80396564)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 胸腹部大動脈瘤 / 対麻痺 / ナノバブル / 脳脊髄液髄液酸素化 / 脊髄虚血 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は胸腹部大動脈瘤手術の最も重篤な合併症である対麻痺に対する脊髄保護法に関するものである。脊髄虚血中に脳脊髄液中の酸素飽和度が低下することは既に報告されているが、これは脊髄組織が脳脊髄液中の酸素を消費するのではないかという仮説を立て、さらに脳脊髄液中の酸素飽和度を上昇させることが出来れば、脊髄虚血に伴う低酸素状態を回避できるのではないかと仮説を立てた。脳脊髄液中の酸素飽和度を上昇させる方法として、我々が着目したのがナノバブル発生装置であり、生体内で投与しても気泡化せず、通常よりも高い酸素飽和度を示す液体が産生可能となる。 前年度に既にナノバブル発生技術を用いた酸素化人工髄液を脳脊髄液中に1時間持続注入することで、脳脊髄液中の酸素飽和度の上昇が達成された動物モデルを確立しており、当年度は介入群と対照群との群間比較に着手した。sham群、対照群、非酸素化人工髄液投与群、酸素化人工髄液投与群(介入群)の4群(各n=5)を設定し、15分間の脊髄虚血を発生(sham群はsham操作のみ)させることで、虚血性脊髄障害に対する脊髄保護効果の評価を行った。研究結果は脳脊髄液酸素化を行った群では、対照群と比較して、神経学的評価、病理学的評価ともに有意差を持って、脊髄保護効果が優れているというものであり、仮説に対する動物実験による裏付けが行われたと考えている。このような方法での脊髄保護効果を検討した研究は過去になく、有効性が示されたことで虚血性脊髄障害に対する新たな脊髄保護戦略の構築の可能性が示された。 現段階は上記の結果を受けて、実験を終了し、学術集会と学術論文にて結果の公表の準備を進めている段階であり、2016年5月アメリカ胸部外科学会にて口演予定である。またJournal of Thoracic and Cardiovascular Surgery に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は3年目で研究結果の解析と学術集会での発表、学術論文化を計画していたが、既に結果の解析は終了し、学術集会での発表も予定されている。学術論文化の計画も既に海外誌へ投稿中で、改訂を経て、査読中という段階まで進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の展望として、脳脊髄液酸素化モデルが確立したウサギを用いて、15分間以上の脊髄虚血発生時における虚血耐容能の検討が必要と考えられる。同時にウサギよりも大型動物を用いて、実際の臨床使用を念頭に置いた実験計画の検討と作成を進めていく予定としている。 本研究では脳脊髄液酸素化による有効性が示された一方で、脳脊髄液圧上昇が確認されている。髄液圧上昇は臨床上では脊髄障害のリスク因子と考えられており、髄液ドレナージは既に広く浸透した脊髄保護戦略である。酸素化人工髄液の髄腔内投与と髄液ドレナージが同時に可能になるようなデバイス開発(例えばダブルルーメン髄腔内カテーテル)が可能かの検討も併せて必要になると予想される。 また、本研究で示された脊髄保護法は既存の脊髄保護法と独立した性格をもつものであり、既存のものとの併用にて更なる脊髄保護効果が得られる可能性が想定され、実験計画の立案に取り組みたいと考えている。
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Causes of Carryover |
麻酔薬・抗体等を購入し、ほぼ計画通りの研究費を使用した。試薬の変更などがあり次年度使用額が生じている。実験計画は概ね予通りに行われ、結果の解析まで既に完了している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は研究結果の公表が主な計画であり、学会参加費や学術論文に関わる費用などに使用する予定である。
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