2015 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍血管新生の機序解明と新規治療開発を目的とした血管芽腫原因遺伝子の探索
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26670636
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武笠 晃丈 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (90463869)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 將太 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80643725)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 血管芽腫 / VHL病 / 腫瘍血管新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、これまで収集した全32例の血管芽腫(以下、HBと略)の臨床検体に加えて、東京大学脳神経外科のVHL病外来患者や、新たなHB摘出術施行症例に対して、さらなる正常血液検体や、腫瘍検体(凍結検体など)の収集を行った。腫瘍検体については、遺伝子解析のためのDNA抽出を行い、また、VHL病が疑われる患者においては、遺伝カウンセリングを施行後、本人の承諾を得た後、正常血液からDNA抽出を行い、VHL病の遺伝子診断を、主に、direct sequencing法とMLPA法を用いて行った。 昨年度までの我々の検討では、特に、VHL病でない孤発性の患者のHB腫瘍検体では、VHL遺伝子の変異や欠損の同定される割合が低かった。その為、VHL遺伝子異常以外の機序が、孤発性HBの腫瘍化には必要と考えられた。しかし、2014年12月、アメリカのMGHの研究グループによって、次世代シークエンサを用いた解析で、孤発性HBであっても、VHL遺伝子異常が多い事が報告された。そこで、当科の腫瘍検体に対しても、Ion Torentを用いたtarget sequenceを行ったところ、孤発性HB検体でも、VHL遺伝子異常が多い事を確認した。しかし、target sequenceを行ってもVHL遺伝子異常がない症例はあり、それらの症例の中には、VHL遺伝子プロモーターのメチル化を認める症例があることが、methylation-specific PCR法及び、bisulfite sequence 法を用いることで確認された。 従って、これまでの我々の研究実績をまとめると、VHL病患者のHB検体でも、孤発性のHB検体であっても、VHL遺伝子異常と不活化が半分以上の検体で認められており、改めて、HBの腫瘍化には、VHL遺伝子異常が重要な働きをしている可能性が出てきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
VHL病では、HBだけでなく、腎がんも起こりやすい事が知られている。最近のゲノム解析データでは、腎がんでは、VHLだけでなく、PBRM1やBAP1などの遺伝子異常が多い事が知られている。そこで、当科のHB検体においても、腎がんで遺伝子異常の頻度が高い遺伝子に対して、target sequenceを行ったが、現時点では、有意な遺伝子異常を伴う遺伝子は判明していない。本研究の第1目標であった、HB腫瘍化に対する、VHL遺伝子以外の新規原因遺伝子の同定に関しては、遅れているのが現状である。 本研究において、当科と京都大学iPS研究所と連携研究を行っていたが、平成27年度には、当科より、2検体、VHL病症例の正常皮膚と正常血液をiPS研究所に提供し、いずれもVHL病特異的iPS細胞の樹立に成功している。また、本研究のもうひとつの連携先である、京都大学中村研究室では、現在、VHL病特異的iPS細胞に対して、VHL遺伝子異常を導入して、血管芽腫細胞株の樹立を試みているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように、HBにおける新規原因遺伝子異常の同定に関しては、困難をきたしている状態である。実際、前述した、MGHが報告した論文においても、HBに対して、exome解析をしているが、VHL遺伝子異常以外、有意な遺伝子異常はなかったと報告されている。 従って、今後は、検体数を増やし、再度、target sequenceを行うだけでなく、網羅的メチル化解析やRNA-seqなどの発現解析を行う事で、新規原因遺伝子の同定を試みる。また、iPS細胞などから樹立された血管芽腫細胞株ができた場合、VHL遺伝子異常が、HBの腫瘍化にどのように関与するのかを解析していく方針である。
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Causes of Carryover |
これまでの研究結果をもとに、VHL遺伝子異常を有さない血管芽腫の症例について、エクソーム解析を予定していたが、他の研究グループからの報告により、VHL遺伝子異常の同定にはサンガーシークエンス方では不十分な可能性がでた。このため、上述のようにまず、Ion Torrentを用いたtarget sequenceを行い、腫瘍率が低い検体だがVHL遺伝子変異を有しているものの選別を行った。このため、研究計画に遅れが生じて、次年度に持ち越す必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前述のごとく、今後、再度target sequenceを行うだけでなく、網羅的メチル化解析や発現解析を行う事で、新規原因遺伝子の同定を試みる計画であり、それらに拠出する予定である。
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Research Products
(4 results)