2015 Fiscal Year Research-status Report
In silico創薬手法による神経膠芽腫に対する新規MGMT特異的阻害剤の創製
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26670648
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
荒井 隆雄 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (40307400)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田沼 靖一 東京理科大学, 薬学部, 教授 (10142449)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | In silico創薬 / 神経膠芽腫 / MGMT特異的阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経膠芽腫はあらゆる「がん」の中で最も治療困難な疾患のひとつである。Temozoromide(TMZ)は、本疾患に対する標準治療として現在使用されているアルキル化剤である。近年、TMZの無効群の存在が明らかとなり、その原因がO6-metylguanine-DNA methyltransferase(MGMT)による脱アルキル化DNA修復であることが解明された。すなわちMGMTによる薬剤耐性を克服することは、本疾患の治療成績の向上につながる。 一方、computational drug designによるin silico創薬は構造ベースの理論的プロセスを経ることで、効率的かつ高い成功率で最適化合物の分子設計を可能とする。本研究では、in silico創薬手法を用いて神経膠芽腫に対する新規MGMT特異的阻害剤の創製を目的とした。 平成27年度は、初年度の研究の進行状況から以下のごとく研究を実施する予定とした。1)in silico創薬手法を用いたdocking studyにより、化合物ライブラリの中からMGMT活性中心に結合能を有する阻害剤候補化合物を引き続き検索する。2)1)で検索した阻害候補化合物群について、ヒトglioma cell lineを用いてその薬理効果をin vitorにて検証する。3)in vivoの実験に備えて、ヌードマウス皮下腫瘍モデルを用いた実験系を確立する。4)2)より得られた効果の高い薬剤について、in vivoでの抗腫瘍効果を検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予備実験として、既知のMGMT阻害剤であるLomeguatrib(LOM)を用いて、TMZ+LOM併用効果の検討を行った(T98G cellを用いたcolony formation assay)。これによりLOMとTMZを併用すると、TMZの細胞増殖抑制効果が7倍増強することが明らかとなった。この予備実験により、LOMをpositive controlとしMGMT阻害候補化合物のcell-based screning assay系を確立した。 また、In silico sceeningにより合計28種類のMGMT阻害候補化合物(No.1~No.28)を選定した。前述のassay系を用いてこれらの化合物を評価したところ、TMZと併用することでコロニー増殖抑制効果を30%以上示す5つの化合物を見出した(No.2,13,18,21,28)。さらに5つの化合物のうち単独処理時よりもTMZを併用することでコロニー形成を抑制する化合物としてNo.13を見出した。In vivoの予備実験としては、U87MG cellを用いたヌードマウス皮下腫瘍モデルを作成した。
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Strategy for Future Research Activity |
今回見出した5つの化合物の構造的特徴から、LOMとの構造類似性が低い多様な疎水性官能基を許容できる部位(X)と構造類似性が高い部位(Y,Z)があることが判明した。今後は、LOMのような単独処理では細胞毒性の少ないMGMT阻害剤を検索・検討する必要がある。そのひとつとして化合物No13のchemical space Xについて構造最適化を行い、新規MGMT阻害化合物の創製を進めていく方針である。
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Causes of Carryover |
MGMT阻害候補化合物の検索に予想以上に時間を要したため。また、In vivo実験に向けての予備実験は開始したが、候補化合物を用いたin vivo実験まで進行しなかったため次年度額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に行う予定の、1)化合物No.13の構造最適化およびその評価実験に必要な物品 2)ヒトglioma cell lineとヌードマウスを用いたin vivo実験系の確立 3)1)で得られた新規MGMT阻害化合物のin vivoによる評価 4)これらの研究結果を学会で発表するための旅費 として使用する計画である。
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