2014 Fiscal Year Research-status Report
滑膜細胞の活性化機構:伸展刺激にともなうp53の機能低下
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26670670
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
田中 康春 琉球大学, 医学部, 教授 (20124878)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | p53 / 滑膜細胞 / 伸展ストレス / DNp73α / アポトーシス / 15d-PGJ2 |
Outline of Annual Research Achievements |
炎症誘発因子は、滑膜の持続的炎症や肥厚といった変形性関節炎の病態形成に密接に関係します。筆者らは以前、過剰な機械的刺激が滑膜細胞におけるNFκBの活性化を介した炎症誘発因子の発現を亢進することを報告していますが、機械的刺激に応答したNFκBの活性化の機序の解析並びにNFκB分子やNFκBの活性化に関係する分子を標的とした阻害剤の探索が、変形性関節炎の発症メカニズムに基づく適切な治療法の開発につながります。 本研究において、筆者による以前の報告も参考にして、機械的刺激とNFκBの活性化を結びつける因子としてp53、DNp73αを想定し研究を進めています。p53に依存した遺伝子発現に関して、p53とDNp73αは相反する機能を有しています。筆者は、滑膜細胞の伸展刺激に起因してp53の発現量が低下することがNFκBの活性化に結びつくという仮説を検証したが、NFκBの活性化と相関したp53の発現量の低下は起こらなかった。従って、現時点で伸展刺激にともなうp53の量的変化がNFκBの活性化に寄与するという仮説は排除されますが、p53の転写調節能の低下という質的な側面からの検証は現在進めており、最終結論は今後の研究に委ねられます。又、これに関連し、筆者は、複数の細胞株においてDNp73αがNFκBの活性化を誘導することを報告しており、DNp73αの増加がNFκBの活性化を誘発した可能性について今後解析する予定です。 15-deoxy-Δ12,14-PGJ2 (15d-PGJ2)が関節リウマチ患者由来の滑膜細胞に対して細胞死を起こすことから、治療薬としての可能性が提唱されていますが、反証論文もあり確定していません。本研究において、滑膜細胞に対してp53およびPPARγ非依存的にカスパーゼ誘導性のアポトーシスを起こすことを明らかにし、研究発表欄に記載したように本年度論文報告しました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題名は、滑膜細胞の活性化機構:伸展刺激にともなうp53の機能低下であり、伸展刺激にともないp53の機能低下が起こることが、NFκBの活性化を誘引するとする仮説に基づくものです。そのため、p53の機能低下が伸展刺激にともなうNFκBの活性化に先行して観察されるのか、もしそうならば、その低下は量的なものか質的なものかについて解析するべきところです。又、仮説とは異なり、p53の機能低下が起こらない場合、つまりNFκBの活性化がp53非依存的に誘発されるとした場合、次の解析対象として何を考えるのか、といった点が本研究課題を推進する上で重要であり、達成度を判断する上での指標となります。その観点から、伸展刺激によるp53の量的低下は否定されましたが、まだ機能低下については解析が進んでいないことから、当初の計画より遅れていると判断できます。しかしながら、一方で細胞死誘導という方向から関節リウマチの治療薬として提唱されている15d-PGJ2の滑膜細胞死誘導の機序を詳細に解析し、論文(I.F. 2.862)として報告した点は評価してもらえると判断し、『やや遅れている』としました。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策として、p53の機能面から伸展刺激がp53におよぼす影響を解析するとともに、伸展刺激がDNp73αの発現亢進を起こすのかについても解析を進めます。研究実績概要欄で掲出した15d-PGJ2は、非酵素的にp53に結合することでp53分子を不溶化し機能低下を起こさせます。又、熱ストレスを与えた細胞でも同様にp53が不溶化し機能が低下します。筆者は、伸展刺激が同様にp53の不溶化を誘発し、質的に機能低下を起こすのではないかと考えています。一方、p53の機能低下した細胞では、DNp73αによるNFκBの活性亢進が観察されることから、DNp73α依存的なNFκBの活性化機序についても解析を進めます。 滑液中に含まれるグルコサミン等の糖化合物は、溶液の粘度を保つ役割が従来知られていますが、最近の研究では、細胞に対してある種のシグナル因子的役割を果たすという報告が散見されつつあります。そこで、伸展刺激依存的なNFκBの活性化に対するグルコサミン等の抑制効果について解析を進めます。
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Research Products
(2 results)