2014 Fiscal Year Research-status Report
レジスタンストレーニングによる骨粗鬆症予防を微小循環から考える
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26670671
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
福田 裕康 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (90444984)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | レジスタンストレーニング / 筋線維 / 微小循環 / 骨膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨粗鬆症は組織の代謝機構であるとの見方から、骨代謝を調節するメカニズムに注目が集まっており、感覚神経による骨代謝調節についての報告もある。一般に臓器の代謝維持にはそこに分布する微小循環が正常に働いている必要があるから、骨組織の維持にも骨に分布する微小血管が重要なはたらきを演じていると考えられる。最近、レジスタンストレーニングの、骨粗鬆症の発症や進展を遅らせる効果が報告されている。さらに、このトレーニングが骨代謝を正常化し骨量を増加させるという骨組織に直接働いているような効果を持つことも報告されている。この機構には骨代謝に関するメカニズムの関与が考えられる。 予備実験からモルモット脛骨の骨膜上の細動脈に律動的自発収縮や感覚神経による支配とその週齢による変化を確認したことから、骨組織の維持にも分布する血管のはたらきが重要であり、トレーニングによって骨循環を制御する感覚神経の働き方や血管運動を改善することで骨組織の改善に寄与しているという可能性が考えられ、その解明が必要となった。 そこで、まず負荷を制御できるようにしたレジスタンストレーニングを小動物の下肢に施す方法を確立することを目指した。6週齢のモルモットに1回/週、麻酔下において前脛骨筋を伸展させた状態で筋肉を収縮させる運動を電気刺激によって起こした。電気刺激は前脛骨筋に電極を貼り、0.2Hz間隔で刺激持続時間1ミリ秒で5Hzの刺激を20回行った。6週までの治療では、筋収縮は刺激の時間とともに収縮高が減弱するのが観察されたのみであった。7週目以降、同様な電気刺激を与えると収縮高はある一定の周期で収縮高の変化が認められた。筋収縮の様式に変化が認められたことから、骨格筋の線維タイプの変化を検討するために、コントロール状態の前脛骨筋の免疫組織化学染色を試みたところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
モルモットのレジスタンストレーニングは行った例が少なく、骨格筋を運動させた後の変化の指標を検討するために多大な時間を要した。また、その電気刺激自体の方法や条件、モルモットの週齢など検討項目が多かった。しかしながら、電気刺激中の筋力測定において明らかな変化を認め、組織的にも検討できるめどがついた。これらの条件を使ってレジスタンストレーニングが骨膜の微小血管に与える影響について検討できる環境となった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に検討したモルモットの前脛骨筋に電気刺激を与える条件を用いて、レジスタンストレーニングを行う。まず、トレーニングした前脛骨筋の筋収縮の変化や筋力の変化を測定し、レジスタンストレーニング前後での変化を検討する。また骨格筋における免疫組織化学染色を行い、組織的変化と筋力などの指標を比べて検討する。レジスタンストレーニングの効果が認められたら、前脛骨筋と隣接する微小血管を含んだ脛骨の骨膜標本を作成し、微小血管の機能的変化を検討する。 微小血管の機能的変化は微小血管径を指標とし、経時的血管径追跡システムを用いて血管径を経時的に測定する。レジスタンストレーニングを行った個体とトレーニングを行っていない個体の骨膜動脈の自発活動を観察し、トレーニングによる自動活動の変化を検討する。また、チャンバー内の骨膜標本に電気刺激装置を用いて神経細胞にのみ興奮が起こるような短時間矩形波電流を流し、神経刺激状態を実現する。次に、 レジスタンストレーニングを行った個体とトレーニングを行っていない個体の神経刺激に対する骨膜細動脈収縮弛緩反応を比較し、トレーニングによる神経反応の変化を比較検討する。また、神経伝達物質の阻害剤存在下で神経刺激を行い、トレーニングによる血管運動の神経反応の変化がどの神経の変化(活性化、不活性化)によるものなのかを検討する。
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Causes of Carryover |
モルモットでの最適なレジスタンストレーニングの条件設定のために時間を要した。レジスタンストレーニングを安定させるための麻酔量、電気刺激を行う方法の確立、どの時点でレジスタンストレーニングを評価するのかの検討が予想以上に必要であった。そのため、何度かレジスタンストレーニングの条件設定を変えたため、最終的に行う骨格筋の評価のための免疫組織化学染色を予定通り行えなかった。また、レジスタンストレーニング後に評価予定であった骨膜の染色についてもトレーニングの遅れのため予定通り行えなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
レジスタンストレーニングの骨格筋における変化を明確にするために、レジスタンストレーニングの過程やレジスタンストレーニング後の免疫組織化学染色を行い、レジスタンストレーニングの効果を評価する。また、レジスタンストレーニングの骨格筋の変化と隣接する骨上にある骨膜微小血管の変化を比べるために、骨膜微小血管の免疫組織化学染色を行い、微小血管の機能に寄与する神経の状態を確かめる。
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