2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26670686
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
正田 丈裕 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60335263)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 肝移植 / 再灌流症候群 / 血管拡張物質 / 予測因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝移植再灌流時に発生する著明な(30%以上の)血圧低下、いわゆるPost-reperfusion syndrome(PRS)のメカニズムを明らかにするため、肝移植の再灌流前後に採取した血漿サンプルをモルモット胸部大動脈や腸間膜動脈のリング状標本に投与した。その結果、再灌流後血漿の投与後にのみ内皮依存性弛緩反応を示すことを明らかにした。 この弛緩反応が再灌流後の血漿中に存在する何らかの物質によることを明らかにするため、数種類の既知の血管拡張分子の受容体拮抗薬を前投与した。その結果、ATP受容体であるP2Y1受容体拮抗薬MRS2179の前投与で、再灌流後血漿による弛緩反応が消失することを発見した。ATP自身もこの血管をP2Y1受容体を介して弛緩させた。これらの結果は、ATPが再灌流後血漿中に含まれるPRSを引き起こす候補分子であることを示唆している。 過去の他施設での臨床研究では、冷虚血時間および無肝期における門脈‐下大静脈シャントの有無が予測因子として、有意にPRSの発生と関連することが報告されている。しかしながら、この報告は冷虚血時間が8時間以上の脳死肝移植における結果であり、冷虚血時間が短い生体肝移植ではPRSの発生はみられなかった。我々の施設では、ほとんどの症例が冷虚血時間が3時間以内の生体肝移植であるにもかかわらず、PRSが一定の割合でみられる。生体肝移植におけるPRSとその予測因子を明らかにするため、2010年1月から2011年12月までに我々の施設で施行された生体肝移植術100例における、PRSの発生率とその予測因子について検討した。その結果、PRSは20%の割合で発生し、冷虚血時間と門脈‐下大静脈シャントの有無はPRSと関連はみられず、唯一年齢のみが関連した。ロジスティック回帰分析の結果、年齢が10歳増加するとPRSの発生頻度は1.5倍に上昇した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1年目としては当初の予定どおりであるが、まだ公式に発表していない。
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Strategy for Future Research Activity |
肝移植患者の再灌流前後の血漿中のATP濃度を測定し、血圧低下との関連を精査する予定である。ただ、ATPはすぐに代謝されアデノシンに変換されるので、保存方法を検討する必要がある。アデノシンを測定することも考慮する。 生体肝移植におけるPRSと術後の致死率、有病率との関連を、医療記録から抽出したデータで解析する予定である。
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