2015 Fiscal Year Research-status Report
細胞間情報伝達機構に焦点をあてた子宮内膜症発症のメカニズムの解明
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26670725
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
澤田 健二郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00452392)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 子宮内膜症 / エクソソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
子宮内膜症は生殖年齢女性の約10%に発生するCommon disease であり、その克服は女性の生活の質(QOL)に留まらず、少子高齢化に悩む我が国の社会に重大な意義をもつ。現行治療は有効ではあるが、手術であれ、ホルモン治療であれ再発も多く、新たな治療の開発が期待される。そのためには「何故、一旦子宮壁から脱落した子宮内膜組織が腹腔内で生着してしまうのか?」に対する分子レベルでの解明が必要である。考察を重ね、子宮内膜細胞が腹腔内に逆流する際に卵管上皮や腹膜中皮細胞と接触する過程で、これらの細胞よりの情報伝達を受けて、いわゆる“子宮内膜症細胞”に進化するのではないかとの仮説を立案した。今回の研究ではその情報伝達が細胞より放出される小胞体の一つであるエクソソームを介してなされると考え、エクソソームの子宮内膜細胞への伝達機構、その情報を解明する。以上の検討を通じて、子宮内膜症の成因の新説を樹立し、かつ、新規分子標的治療の可能性を提示したい。しかしながら、エクソソームの抽出はまだまだ確立されたプロトコールも存在しておらず、初代培養からの安定した抽出は困難である。そこで、平成27年度は卵巣がん細胞株HeyA-8 を用いたエクソソームを抽出した。超遠心法により、1x108個の卵巣癌細胞から、50μg程度のエクソソームを抽出することができた。そこで、さらにその機能解析を行うべく、腹膜中皮細胞への添加実験を行った。腹膜中皮細胞を婦人科手術で摘出した大網より抽出し、初代培養した。エクソソームを蛍光色素であるPKH67 (Sigma)で標識し、腹膜中皮細胞へ添加したところ、その取り込みが確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現時点では、エクソソーム研究はまだまだ端緒をついたばかりで、その抽出の確立されたプロトコールは存在しない。市販のキット製剤は存在するが、それらを用いて得られるエクソソームの収量はとても少なく、遺伝子解析はともかく、機能解析には使えない。また婦人科の手術検体より、腹膜中皮細胞を初代培養しているが、それで得られる細胞は決して多くはない。そこで、平成27年度は卵巣がん細胞株HeyA-8 を用いて行い、上述したように一定の成果を上げている。今回の研究を通じて、高純度、高濃度のエクソソームを回収するプロトコールをある程度確立できたと考える。平成28年度には初代培養した内膜間質細胞よりのエクソソーム回収を予定通り行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
まず腹膜中皮細胞よりエクソソームの抽出を行う。平成27年度までの実験により、エクソソームの抽出プロトコールは確立している。そこで本年度は初代培養した腹膜中皮細胞よりエクソソームを抽出し、子宮内膜症間質細胞への添加実験を行う。得られた小胞がエクソソームであるかどうかはCD63 およびCD81 抗体を用いた免疫染色を行い電子顕微鏡で確認する。採取したエクソソームを緑色蛍光色素PKH67 (Sigma)で蛍光標識した上で、子宮内膜症間質細胞に添加し、48時間後、細胞に取り込まれているかどうかの確認を行う。具体的には細胞のアクチン骨格をAlexa-555 Phalloidin (Invitrogen)で赤色染色し、共焦点蛍光顕微鏡で、エクソソームの取り込みと同時にその局在を確認する。さらにエクソソーム添加後の細胞を回収し、1.接着能、2.運動能、3.浸潤能の亢進がエクソソーム添加によって、誘導されるかどうかをIn vitro 実験で検討する。
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Causes of Carryover |
平成28年度は初代培養した腹膜中皮細胞よりのエクソソームの分離培養を行う。実験に使用できるレベルのエクソソームを回収するには、大量(すくなくとも1x108個)の細胞が必要であるため、大量の細胞培養液を必要とする。さらに腹膜中皮細胞は20%FBS 環境下で培養しないといけないため、大量の高価なFBS を必要とする。そのために予算を平成27年度は使用を控え、次年度に持ち越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験試薬や器具(主に、物品費)の購入に充てる。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Efficacy of raloxifene hydrochloride for the prevention of health care problems in patients who undergo surgery for endometrial cancer: a multicenter randomized clinical trial.2015
Author(s)
Nakamura, K. Sawada, K. Sugiyama, M. Mabuchi, S. Hisamatsu, T. Nishio, Y. Ito, K. Kimura, T. Kamiura, S. Morishige, K.
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Journal Title
Int J Gynecol Cancer
Volume: 25
Pages: 288-295
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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