2014 Fiscal Year Research-status Report
発現誘導システムで制御するRNA干渉を用いた糖尿病黄斑浮腫の治療
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26670752
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
村田 敏規 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (50253406)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
家里 康弘 信州大学, 医学部附属病院, 助教(診療) (00708357)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 遺伝子改変マウス / 糖尿病黄斑浮腫 / VEGF / RNA干渉 / 発現誘導システム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではレトロウィルスベクターを遺伝子導入手技として用いる。導入された遺伝子の発現は長期間維持されるが、遺伝子導入効率をあげる事が、一つの大きな課題となる。レトロウィルスベクターは、増殖する細胞にのみ、遺伝子を導入するので、眼球内に増殖細胞を作り出す工夫として、レーザー光凝固を採用した。まず、信州大学の動物舎で、マウスに網膜のレーザーを行うシステムを構築した。ヒトに用いるレーザーで、マウスを散瞳して、カバーグラスを接眼レンズとして角膜に接触させることで眼底観察が可能で有り、通常のレーザーシステムを用いて、網膜のレーザー凝固が可能であった。さらに、網膜神経線維層を破壊せず、外層のみに障害をとどめる凝固条件を検討し、第一報として報告した。(Effect of Laser wavelength on delivering appropriate laser burns through the opaque lens using a pattern scan laser. Hirano T, Murata T. Ophthalmic Res. 2014;51(4):204-9) 次に、糖尿病網膜症類似の病変を発症する、網膜でVEGF(vascular endothelial growth factor)を過剰発現するマウスであるKimbaマウスで、蛍光眼底造影、光干渉断層計の所見を採る主義を確立した。眼底撮影には前置レンズを、マウス用のコンタクトレンズを工夫し作成すること、散瞳を撮影直前に行い前房の混濁を避けることなどの工夫で、ヒトを撮影した場合と同程度の、精度の高い画像を撮影可能となった。特に、蛍光眼底造影で、無灌流領域を検出できるようになったので、眼底所見と併せて、摘出眼より灌流正常の部位と、無灌流領域をわけて、標本を採取できるようになった。 これらの手法を用いて、siRNAで眼球内のVEGF活性を抑制することを直接的に試みることができるようになった。特に、real time PCR、western blotでのVEGF産生および活性の抑制を確認できることは、今後の研究で極めて有用な手技となると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
kimbaマウスはヒト型VEGF過剰発現により、糖尿病網膜症に類似した網膜浮腫と血管新生をおこすことが報告されたマウスである。当研究室では、kimbaマウスを飼育観察するシステムの開発を今年度ほとんど完成させることができた。すなわち、以下のような点を可能とした。1)安定したマウス数の確保。自家で妊娠出産をおこない、実験に必要なマウス数を確保できる体制を確立した。2)蛍光眼底造影の高画質撮影を可能とした。従来、ヒト様の眼底カメラを用いると、マウスの眼底が全体を一度に写すことができず、暗い部分は血流が途絶えているのか、写真が写っていないだけなのかの判定が難しかった。我々はコンタクトレンズと、光学経路に2枚のレンズを追加した特殊な眼底カメラを用いて、マウスの眼底をヒトの眼底カメラで、全体を高画質で撮影できる技術を完成した。3)網膜浮腫の観察を確認する上で必須の、光干渉断層計をマウス用のアダプターを設置することで、高画質のEllipsoid zoneやcystoid macular edemaを詳細に観察できるカメラを完成させた。 4) 研究代表者は以前、レトロウィルスベクターを用いて、網膜光凝固斑に選択的に遺伝子導入し、その治療効果を高めることが可能であると報告している。
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Strategy for Future Research Activity |
レトロウィルスでVEGF発現をブロックするsiRNAを持続的に網膜で発現させることで、糖尿病網膜症類似の網膜浮腫と網膜血管新生を治療できることを証明する事が最終目的である。なお、レトロウィルスの遺伝子導入効率の低さは、網膜レーザー凝固を行い、網膜内に増殖する細胞を誘導して、ここに遺伝子を導入することで効率を高め、更に浮腫が起きる病巣の近傍で、SiRNAを発現させることが可能となると考えている。 Kimbaマウスは人間と同様に、網膜症は無治療だと牽引性網膜剥離となり、最終的には病勢が燃え尽きる。この時期にVEGF発現抑制し続けることは、survival factorとしてのVEGFの活性を抑制してしまうので、糖尿病網膜症類似の病変が治療終了後は、遺伝子発現誘導システムを利用して網膜でのsiRNA発現を止める技術を確立することを計画している。 ウィルスベクターによる遺伝子発現は、テトラサイクリンによるTet-On/Off発現誘導システムをはじめとして、種々の発現誘導システムで制御できる。その発現は付加するテトラサイクリン(ドキシサイクリン)の用量依存性に、siRNAの産生が制御できる。抗生物質を長期間使用することは副作用が懸念されるが、現在あらゆる物質(蛋白質、有機化合物質、無機化合物質)を誘導物質として誘導が可能とされている。例えば、カロリー0食品のアステルパームなどを用いれば長期発現で副作用なく、しかも摂取をやめれば遺伝子発現が止まる。
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Research Products
(3 results)