2015 Fiscal Year Research-status Report
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26670782
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
後藤 薫 山形大学, 医学部, 教授 (30234975)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋元 亮 山形大学, 医学部, 助教 (40594677)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 低酸素ストレス / HIF / 細胞内情報伝達機構 / 培養細胞 / ジアシルグリセロールキナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
心肺蘇生後症候群は、心肺蘇生で自己心拍が再開した患者が、その後に生じる様々な臓器障害によって予後を悪化させる現象として、2008年に報告された。心肺蘇生後の脳機能障害は、循環・呼吸停止による低酸素ストレスと心拍再開後の脳浮腫によって惹起されると考えられている。近年、心拍再開直後の低体温療法により、神経予後の改善が報告されているが、その明確な脳保護作用は明らかではない。この時、低酸素誘導因子 (HIF) は低酸素状態での遺伝子発現の制御を行っており、エリスロポエチン、血管内皮増殖因子(VEGF)、アドレノモジュリン、エンドセリン、一酸化窒素合成酵素2(NOS2)などの制御を介して、低酸素に対する応答を制御する。近年の研究により、二次伝達物質ジアシルグリセロール(DG)のリン酸化酵素DGキナーゼ(DGK)ファミリーの中でゼータ型DGK(DGKζ)がHIFの機能発現制御に関与することが報告されている。本年度は、引き続きDGKζによるHIF蛋白発現制御機構の解析を行った。HIF蛋白は通常、ユビキチンプロテアソーム系により、合成後ただちに分解されるため、その検出が困難である。この易分解性を克服すべく様々な方法を施行した結果、細胞回収時の氷上操作を丁寧に行なうことにより、ウエスタンブロット法によるHIF蛋白発現が検出可能となった。このような条件を用いて実験を行った結果、HeLa細胞を24時間の低酸素負荷(1%酸素)培養を行うと、DGKζノックダウン細胞群においては、正常酸素コントロール群と比較し、HIF1α蛋白の発現が約50%減少することが明らかとなった。すなわち、DGKζはHIF1α蛋白発現に対して正の制御機構を発揮することが示唆され、DGKζの発現低下は、低酸素ストレス応答を減弱させる可能性があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HIF蛋白は、低酸素状態における細胞応答の主要な制御因子であり、その発現は厳密に調節されている。これまで、実験的低酸素条件として、塩化コバルトやDMOGを用いた化学的低酸素負荷や、グルコース利用阻害(2-デオキシグルコース)等の実験を行ってきたが、本年度は、実際に低酸素培養(1%酸素)による実験を行い、ウエスタンブロット法によりHIF蛋白を検出することが可能になった。これまでの報告により、このHIF蛋白の発現制御に関しては細胞内情報伝達制御因子の一つである脂質性二次メッセンジャー代謝酵素DGKによる調節機構が示唆されていたが、DGKファミリーのうち、いずれのアイソザイムが関与するかは未だ不明であった。今回の実験により、DGKファミリーの中でDGKζのノックダウン細胞において、HIF1α蛋白の発現誘導が減少することを明らかにした点は大きな前進であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまで構築した実験系を用いて、DGKζによるHIF1α蛋白の発現制御が、低体温条件下においてどのように影響を受けるかについて解析を進める予定である。そのため、30℃の低温培養条件を設定し、HIFの分解系、およびDGKζによる制御機構を追求したい。さらに個体レベルでの条件設定も模索したいと考えている。
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Causes of Carryover |
HIF蛋白の易分解性のため、ウエスタンブロット法における検出が困難で、実験データに大きなばらつきが生じていた。この点を改善するために、種々の文献ならびに様々な研究者からの情報を集め、条件検討を行ったため、低温培養下での実験に遅れが生じていた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
それぞれの実験に使用する細胞種などを考慮し、各実験に最適なHIF抗体を比較検討することにより、より感度の高い特異抗体を選定し、低温培養実験に移行する予定である。
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Research Products
(3 results)