2016 Fiscal Year Research-status Report
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26670782
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
後藤 薫 山形大学, 医学部, 教授 (30234975)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋元 亮 山形大学, 医学部, 助教 (40594677)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 低酸素ストレス / HIF / 細胞内情報伝達機構 / 培養細胞 / ジアシルグリセロールキナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
心肺蘇生後症候群は、心肺蘇生で自己心拍が再開した患者が、その後に生じる様々な臓器障害によって予後を悪化させる現象として2008年に報告された。近年、心拍再開直後の低体温療法によって神経予後の改善が報告されているが、この時、低酸素誘導因子 (HIF) が低酸素ストレス等での遺伝子発現の制御を担う重要な因子であることが明らかになってきた。我々は二次伝達物質ジアシルグリセロール(DG)のリン酸化酵素DGキナーゼ(DGK)ファミリーの中で、ゼータ型DGK(DGKζ)をノックダウンすると、24時間の1%低酸素負荷によってHIF1α蛋白の発現が約50%減少することを報告してきた。 本年度は、HIF1αに加え、細胞内エネルギー枯渇状態で作動するAMP-activated kinase(AMPK)の解析を行った。AMPKは「エネルギー燃料計」としての役割を担っており、低グルコース、低酸素刺激、虚血など、細胞内ATPの消費により増加したAMPに応答して活性化され、エネルギー消費を減少させる作用を持つ。実験の結果、AMKPαのリン酸化はDGKζ-ノックアウト(KO)細胞において増加していることから、DGKζの発現減少によってAMKPαの活性化が亢進することを見出した。AMPKαの活性化は主として、LKB1等により制御されることが報告されているが、LKB1の活性はむしろDGKζ-KO細胞において減少していることが判明した。LKB1は細胞内ATP減少を感知する経路を介して活性化を受けるので、次に細胞内ATP量を測定したところ、DGKζ-KO細胞におけるATP量は野生型の約1.5倍と高値を示すことが判明した。これらの結果から、DGKζ発現減少細胞においては、細胞内ATP量が増加しているにもかかわらず、AMPKセンサーを介する情報伝達系が亢進している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低酸素ストレス後の低体温療法の鍵を握るのは、細胞の低酸素応答において最も重要な働きを担うとされる低酸素誘導因子HIFである。本研究によって、我々が主要な研究対象としている細胞内情報伝達物質代謝酵素ジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)がこのHIFの制御に関与することをが明らかとなり、DGKζの発現低下によってHIFの発現も減少し、低酸素応答性が低下することを見出した。さらに本年度は、低酸素状態における細胞内エネルギーセンサーAMPKの解析にも着手し、DGKζの発現低下によってこのエネルギーセンサーが活性化される一方、細胞内ATP量は増加するという、情報伝達系の乱れが生じることを発見した。このメカニズムをさらに詳細に解明することにより、低酸素応答における細胞情報伝達機構の解明に向けた手がかりが得られると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、HIFとAMPKに加え、もう一つの主要な細胞内エネルギーセンサー、NAD+依存性脱アセチル化酵素Sirtuin 1(SIRT1)の解析を行う。SRIT1は、細胞内NAD+依存性に様々な蛋白の脱アセチル化を介してエネルギー枯渇状態に対応するもので、とりわけリボソームRNA合成の抑制を制御する因子である。そして、これまで解析を行ってきたHIFとAMPKの解析結果と合わせて、低酸素環境応答メカニズム全体のバランスを検討したいと考える。
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Causes of Carryover |
低酸素応答メカニズムの解析中に、これまで行ってきたHIFに加えて、28年度は細胞内エネルギーセンサーAMPKの解析を行った。その結果、予想に反してDGKζ発現減少により、AMPKの活性化が亢進しているにもかかわらず、細胞内ATPは増加しているという結果を得た。29年度は、この相反するAMPK活性化のメカニズムの解析を行うと同時に、さらに低エネルギー応答性分子SIRT1の解析を追加で検討したいと考えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
細胞内情報伝達機構に関与する様々なリン酸化酵素の抗体を購入し、培養細胞実験を用いた実験を行う予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] 生体ストレスを解剖する2016
Author(s)
後藤薫
Organizer
第19回日本臨床救急医学会総会
Place of Presentation
ピッグパレットふくしま(郡山)
Year and Date
2016-05-12 – 2016-05-14
Invited