2014 Fiscal Year Research-status Report
口腔がんにおけるドライバーがん遺伝子の検索と新規分子標的治療法の開発
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26670877
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
藤井 万紀子 愛知県がんセンター(研究所), 分子腫瘍学部, 主任研究員 (70406031)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 口腔扁平上皮癌細胞 / Hippo / YAP / TGF-beta / CTGF |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の急速に進歩しているがんゲノム解析により、遺伝子変異の中でも増殖進展を推進するドライバーがん遺伝子が注目されている。がん発生に重要な遺伝子変異やシグナル伝達の異常は臓器や組織、細胞により異なっており、それぞれの癌腫のドライバー遺伝子をターゲットとした創薬を開発することが分子標的治療薬の奏効率に大きく影響を与えると考えられる。本研究では、口腔扁平上皮癌細胞に固有のドライバーがん遺伝子を検索し、機能解析をすることで分子標的治療のターゲットを絞っていき、これらの結果から口腔扁平上皮癌に対する新たな治療剤の開発に繋げ、分子標的治療薬を基盤とした新たな新規治療法の開発を目的とする。 口腔扁平上皮癌細胞株10種類を培養し、Hippoシグナル経路とTGF-b経路に関して解析を行った。この二つの経路の共通の標的であるConnective Tissue Growth Factor (CTGF)の発現は、口腔扁平上皮癌で認められた。しかしながらCTGFの発現を低下させても明らかな増殖スピードの変化はなかった。口腔扁平上皮癌細胞株からゲノムDNAを抽出し、BAC/PAC法を用いたCGHアレイ(アジレント社)を用いて、遺伝子増幅や、欠失の検索をゲノムワイドな網羅的解析により検出する準備を行っている。特に、すでにドライバーがん遺伝子として知られているEGFRや、更に最近新しく発見されたがん遺伝子であるYes-associated protein (YAP)遺伝子の増減に注目し、それらの経路に異常がないかを中心に解析していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
口腔扁平上皮癌細胞株10種類を培養し、それらの細胞の発現たんぱく質の状態とうについて予備実験を行った。ドライバー遺伝子としての役割を持つ可能性のあるHippo-YAPシグナル伝達経路とTGF-bシグナル伝達経路に関して、それぞれの構成たんぱく質の発現解析を行った。扁平上皮癌細胞において、YAP、Smad2/3、そしてこれら二つのシグナル伝達経路の共通の標的遺伝子であるCTGFに関して、それぞれ発現を認めた。また、TGF-b処理によってCTGFの発現が上昇することも確認した。CTGFの発現を低下させても明らかな増殖スピードの変化はなかったが、形態の変化は認められた。EMTのマーカー等を用いて、この現象を検討中である。 更に口腔扁平上皮癌細胞株からゲノムDNAを抽出し、BAC/PAC法を用いたCGHアレイ(アジレント社)を用いて、遺伝子増幅や、欠失の検索をゲノムワイドな網羅的解析により検出する準備を行っている。特に、すでにドライバーがん遺伝子として知られているEGFRや、更に最近新しく発見されたがん遺伝子であるYes-associated protein (YAP)遺伝子の増減に注目する。
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Strategy for Future Research Activity |
扁平上皮癌細胞を使用して1年目に行ったYAPの機能解析の結果から、阻害剤開発の可能性についての検討を行う。また引き続き遺伝子変異解析を継続し他のドライバーがん遺伝子の機能解析を行う。口腔扁平上皮癌の臨床検体、および口腔扁平上皮癌細胞株を用いてCGHアレー法で遺伝子増幅や欠失の検索をゲノムワイドな網羅的解析により検出する。特に、すでにドライバーがん遺伝子として知られているEGFRや、本研究により口腔扁平上皮癌細胞の細胞増殖に関連すると思われるYAP遺伝子の増減に注目する。 1年目はHippo-YAPを中心としたシグナル伝達経路について研究を行ったが、2年目は、EGFR-TKIに高感受性を示す肺腺癌細胞株と同様のキナーゼ活性化型EGFR変異を持つ口腔扁平上皮癌細胞との比較から、何故臨床において差が出るかを検討し、阻害剤の効果を上げる方法を検討するという研究をも平行して行っていく。
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Causes of Carryover |
平成26年度においては、新規に理研リソースセンターより供与を受けた口腔扁平上皮癌細胞の基礎実験を中心に行った。新規に扱う細胞が増えた場合、その増殖や、発現タンパク質等について基礎データを集めることが大事である。また、生体内でのタンパク質発現等について調べるため、マイクロアレーを用いてYAP,CTGF,Smad2の発現やそれらのたんぱく質の細胞内局在について調べている。 そのためCGHアレーを行うためのスライドの購入費用は平成26年度中の予算では賄えないと判断し、平成27年度の繰越金と併せて、スライド、試薬等を一括購入することにした。平成27年度には、マイクロアレーの結果から重要と判断したたんぱく質について調べるための実験試薬の必要性も考えられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の繰越金と併せて、CGHアレースライド、関連試薬等を一括購入することにした。一方平成27年度には、マイクロアレーの結果から重要と判断したたんぱく質について調べていく。その過程で、抗体やSiRNA、小分子化合物等の実験試薬購入の必要性も考えられる。
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