2014 Fiscal Year Research-status Report
網羅的唾液プロテオソーム解析法による唾液機能的タンパク質研究プラットホームの創設
Project/Area Number |
26670900
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
飯嶋 若菜 東北大学, 大学病院, 医員 (50725207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細川 亮一 東北大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (40547254)
丹田 奈緒子 東北大学, 大学病院, 助教 (00422121)
小関 健由 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (80291128)
菅崎 将樹 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (50444013)
佐久間 陽子 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (90735531)
末永 華子 東北大学, 大学病院, 助教 (00508939)
伊藤 恵美 東北大学, 歯学研究科(研究院), 技術専門職員 (80596817)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 刺激唾液 / 網羅的解析 / 電気泳動 / 唾液タンパク質 / データベース |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔の健康を良い状態に維持するためには、口腔内環境を規定する唾液が大きな役割を担う。唾液は日常生活の中で口腔機能の運転に必要な性状を、時々刻々と変化させる極めて多機能な分泌体液であるが、唾液の評価方法の指標の少なさと対象患者の有病状況等の全身状態の多因子の影響によって、機能的唾液研究が大きく展開できない状況である。そこで、簡便な手法で実施出来る網羅的な唾液プロテオソーム解析手法を開発し、中規模疫学調査時と唾液の病態が関わる患者の診療時に本解析を実施する。その結果から本手法の有効性を検証すると共に、唾液の新たな重要成分を抽出して次の研究の課題を提案することを目的とする。 初年度では、網羅的唾液プロテオソーム解析法の構築と定量的ゲル染色法とゲル撮影法の開発、唾液データベースの構築と解析法の確認の実験を実施して、網羅的唾液プロテオソーム解析法を確立した。100を超える刺激唾液タンパク質のSDS-PAGE泳動パターンを解析し、観察される特徴的なタンパク質バンドの全てを網羅する組み合わせを見いだした。それを元に、10名の20代成人から刺激唾液を30mL提供していただき、特徴的なタンパク質バンドの全てを網羅する唾液セットを抽出した。採取的には4名の刺激唾液を選択し、混合してSDS-PAGE泳動用網羅的刺激唾液標準サンプルを数千回分制作し、ディープフリーザーに保存した。この網羅的刺激唾液標準サンプルの各バンドを質量分析計にかけて、内包する1千種類のタンパク質を同定した。現在、網羅的刺激唾液データベースの基盤情報を整理している。さらに、SDS-PAGE泳動パターンの採取には、唾液中の各タンパク質の濃度が大きく異なるために、検出を鍍銀法の連続撮影を行い、各段階での染色濃度を比較することによって網羅的にSDS-PAGE泳動パターンのタンパク質バンドの有無と濃度を決定する撮影法を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
該当年度は、研究の初年度であり、唾液の機能の新しい検索法として、網羅的唾液プロテオソーム解析法の構築と定量的ゲル染色法とゲル撮影法の開発、唾液データベースの構築と解析法の確認の実験を実施して、網羅的唾液プロテオソーム解析法を確立した。 網羅的唾液プロテオソーム解析法の構築に関しては、初めに本研究の基本となる網羅的刺激唾液標準サンプルを制作した。今後の全てのSDS-PAGE電気泳動で刺激唾液を解析する際には、唾液タンパク質マーカーとして、各種唾液タンパク質の検索に役立つ事となる。この実験では、同じ易動度を示すタンパク質バンドを整理して唾液タンパク質ライブラリ/データベースを構築した。さらに、SDS-PAGE電気泳動で分離した各タンパク質バンドを試料とし、Orbitrap型の質量分析装置を使用し、MS/MS ion search法にて質量パターンを得、Swiss PortデータベースにてMascot検索を実施して唾液タンパク質の同定を行った。本方法は、修飾をうけた糖タンパク質でも最高精度の正確で精密な構成タンパク質の同定が可能である。現在は、膨大なタンパク質を整理して、刺激唾液SDS-PAGE電気須藤データベースと統合する作業を進行中である。 定量的ゲル染色法とゲル撮影法の開発を行った。タンパク質検出は銀染色方を行うこととし、経時的な染色状況を追跡するために、染色台をシャーカステン上に設置して連続撮影を行う装置を組み上げ、安定して画像情報を取り込むことが可能となった。さらに、取り込んだ画像の一次処理として、明度・コントラストの補正と、ゲルの歪みの補正の規格化実施手法を決定した。これにより、刺激唾液データベースの構築と解析法が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、網羅的唾液プロテオソーム解析法を応用した唾液機能性タンパク質の検索の研究をはじめる。これは、完成した網羅的唾液プロテオソーム解析法を応用して、唾液データベースの登録数を増やして唾液機能に関わる唾液機能性タンパク質を抽出し、唾液研究の新分野を開拓するものである。 住民歯科健康診査での機能性唾液タンパク質の検索は、当教室で実施している住民歯科健診において、同意を得られた方の刺激唾液を網羅的唾液プロテオソーム解析法にて検索する。全身の健康状態・生化学検査値・服薬の状態・口腔内の現症をデータベースに転記し、全身と口腔に関連する機能性唾液タンパク質の候補を検出する。本歯科健康診査への参加者は例年200名程度である。 さらに、唾液分泌タンパク質の生理的変動の観察とQOLとの関連の検索も実施する。これには、安静時唾液と刺激唾液の差異の検索として、それぞれの唾液腺導管開孔部から純唾液を採取して、構成唾液タンパク質の比率等を検索する。制作した網羅的刺激唾液標準サンプルは、全唾液を遠心して使用しているので、刺激唾液と安静時唾液が混合しているため、両方の唾液解析に活用できる。解析は、特に唾液機能に関わる成分に注目し、その組成からそれぞれの唾液の生理学的機能を検証する。さらに、唾液構成タンパク質の日内変動の検索の実験(男性)と、女性の性周期に関わる唾液タンパク質構成の変化等の生体の活動状態による唾液構成タンパク質の変化を検証し、本来唾液の持つ機能的特性を検討する。 また、病理学的な唾液腺傷害患者の唾液の問題点の解析として、頭頚部腫瘍の放射線治療前中後の唾液タンパク質の変動等に代表される、周術期の口腔機能管理時の処置による刺激唾液のタンパク構成の変化や口腔乾燥症を訴える方の唾液タンパク質の変化から、唾液の持つ機能的特性を検討する。
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Causes of Carryover |
実験には、多くの試薬と実験機材が使用される。今回は、タンパク質電気泳動の実験が多く実施されたが、その時に使用するポリアクリルアミドゲル等の試薬は、均質な性状の試薬とゲルを使用することが再現性を挙げるために必要であると考えて既製品を多用している。とくにゲルの制作は、初心者では制作したゲルの品質にムラが出やすい。よって、多くの試薬を購入して使用している。この度は、試薬品の使用状況により、試薬の発注が年度を跨いで前後したために、少量の次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験試薬を年度を跨いで発注したために生じた繰越金は、発注試薬を受け取ることによって使用されることとなる。実験の運用には、この様な遅延等が生じないように留意していく。
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Research Products
(5 results)
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[Presentation] 開口障害と多発性う蝕と放射線性顎骨壊死の重篤な晩期有害事象2014
Author(s)
原 美里, 笠原 千秋, 山崎 佐千子, 福井 玲子, 山田 桂子, 手代木 史枝, 高橋 久美子, 伊藤 恵美, 細川 亮一, 丹田 奈緒子, 末永 華子, 菅崎 将樹, 佐久間 陽子, 飯島 若菜, 菊池 瑞穂, 玉原 亨, 百々 美奈, 加藤 翼, 小関 健由
Organizer
東北口腔衛生学会
Place of Presentation
福島市
Year and Date
2014-11-15 – 2014-11-15
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[Presentation] 「赤ちゃんとママのむし歯予防」教室受講者の歯科保健に関する意識と行動 妊娠中からの歯科保健モデル事業報告から(3)2014
Author(s)
菊池 瑞穂, 細川 亮一, 丹田 奈緒子, 末永 華子, 菅崎 将樹, 佐久間 陽子, 飯島 若菜, 玉原 亨, 百々 美奈, 加藤 翼, 伊藤 恵美, 高橋 久美子, 手代木 史枝, 細谷 仁憲, 山本 壽一, 新沼 康弘, 鈴木 宏明, 戸田 愼治, 佐藤 文彦, 佐々木 隆二, 根本 充康, 小関 健由
Organizer
東北口腔衛生学会
Place of Presentation
福島市
Year and Date
2014-11-15 – 2014-11-15
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[Presentation] 妊娠時と1歳6ヵ月児の育児時の母親の歯科保健に関する意識と行動の変化 妊娠中からの歯科保健モデル事業報告から(2)2014
Author(s)
戸田 康子, 細川 亮一, 丹田 奈緒子, 末永 華子, 菅崎 将樹, 佐久間 陽子, 飯島 若菜, 菊池 瑞穂, 玉原 亨, 百々 美奈, 加藤 翼, 伊藤 恵美, 高橋 久美子, 手代木 史枝, 細谷 仁憲, 山本 壽一, 新沼 康弘, 鈴木 宏明, 戸田 愼治, 佐藤 文彦, 佐々木 隆二, 根本 充康, 小関 健由
Organizer
東北口腔衛生学会
Place of Presentation
福島市
Year and Date
2014-11-15 – 2014-11-15
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[Presentation] 1歳6ヵ月児のう蝕発生に関与する妊娠中からの母親の意識と行動 妊娠中からの歯科保健モデル事業報告から(1)2014
Author(s)
根本 充康, 細谷 仁憲, 山本 壽一, 新沼 康弘, 鈴木 宏明, 戸田 愼治, 佐藤 文彦, 佐々木 隆二, 細川 亮一, 丹田 奈緒子, 末永 華子, 菅崎 将樹, 佐久間 陽子, 飯島 若菜, 菊池 瑞穂, 玉原 亨, 百々 美奈, 加藤 翼, 伊藤 恵美, 高橋 久美子, 手代木 史枝, 戸田 康子, 小関 健由
Organizer
東北口腔衛生学会
Place of Presentation
福島市
Year and Date
2014-11-15 – 2014-11-15
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[Presentation] 東北大学病院におけるがん支持療法としての取り組み2014
Author(s)
山崎 佐千子, 伊藤 恵美, 福井 玲子, 原 美里, 笠原 千秋, 細川 亮一, 玉原 了, 吉田 英子, 丹田 菜緒子, 菅崎 将樹, 末永 華子, 百々 美奈, 加藤 翼, 菊池 瑞穂, 小関 健由
Organizer
日本歯科衛生学会
Place of Presentation
大宮市
Year and Date
2014-09-13 – 2014-09-15