2014 Fiscal Year Research-status Report
システムシミュレーションを用いた病院防災ベストプラクティスに関する基礎的研究
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26670920
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
横内 光子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10326316)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 幸則 藤田保健衛生大学, 医療衛生学部, 助教 (00566101)
水野 暢子 静岡県立大学, 看護学部, 准教授 (80338201)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 災害対策 / 病院 / 災害医療 / Health care resilience / Hospital resilience |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、病院の防災・減災対策の現状把握と要件の抽出を到達目標とした。南海トラフ巨大地震が予測される地域として、これまでの東海地方の病院災害対策調査結果の分析と、近畿2府4県の200床以上の病院を対象とした郵送質問紙調査を実施した。また、東海地域の病院3施設を対象とした個別面接調査を実施した。 質問紙調査の結果、回答を得た近畿地方の49施設(回収率17.8%)の平均病床数は369.5(SD±155.2)床で300床以上400床未満の病院が16施設と最も多かった。阪神淡路大震災で被害を受けなかった病院が70.2%を占め、今後起こり得る地震について、自施設の震度・津波高予測を把握している施設は55.3%、東日本大震災以降災害対策マニュアルを改訂した施設は63.8%であったが、マニュアルがない施設も2施設あった。病院職員に対する防災・減災教育を実施している病院は76.6%で災害拠点病院の方がそれ以外の病院よりも有意に多かった。防災訓練は97.9%で実施されており、地震を想定した訓練実施施設は89.4%と最も多かった。東海地方と同様に、災害拠点病院指定を受けた施設と病床数の多い施設は比較的対策がなされているものの、中小規模病院での対策の不備が課題である。 そこで200~300床程度の医療法人が設置主体である中小規模病院に焦点を絞って、面接調査を行った。予算化や災害対策意識など経営層の考え方によって災害対策に大きな差が見られ、BCPを作成し積極的に訓練を実施している施設もあれば、職員の参集基準や対策本部の設置場所等基本事項が定まっていない施設もあった。 以上の結果より、病院災害対策では、1)経営層を含む職員の災害対策意識、2)マニュアルと訓練内容、3)予算・施設・設備・体制、4)災害対策の実施状況の4要素が重要となると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
病院の防災・減災対策に関する質問紙調査と個別面接調査を行い、災害対策の概要や病院の特徴による対策実施状況の相違等現状について明らかにすることができた。また、両調査から、病院の災害対策の重要要素を検討した。今後この重要要素を柱としたベストプラクティス案の抽出につなげる基盤をつくることができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、第一に、より広範囲な地域での病院災害対策の現状を把握するため、四国・九州地方の病院を対象とした郵送質問紙調査を実施する。この調査結果を、これまでのデータと合わせて分析し、立地条件・構造・診療機能類型による災害対策の傾向と問題点を明らかにする。また、前年度の調査結果では、中小規模病院の災害対策の不備が明らかとなった。そのため、データの分析にあたっては、特に中小規模病院に焦点をあて、中小規模病院の中での類型化の鍵となる特性を探り、その特性により類型化した病院群の災害対策の傾向と問題を明確にする。 上記に加えて、特に中小規模病院の個別面接調査を進め、比較的対策の進んでいる施設を典型ケースとして、災害対策評価のシステムシミュレーション実験を行うための病院システムのモデル化を行う。この際、前年度に明らかとなった災害対策の重要要素をシステムに組み込み、今後多様な病院モデルを作成する際の主要要件として活用できるようシステム構築を行う。さらに、モデル化対象病院の実働防災訓練の際のデータを収集し、シミュレーションのパラメータを算出することを目標とする。 前年度の繰越金は、中小規模病院の個別面接調査の交通費と謝金謝金、およびデータ入力・整理の人件費としての支出を予定している。
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Causes of Carryover |
病院の個別面接調査数が予定を下回ったため、調査のための交通費と謝金,ならびにデータ入力整理の人件費ための予算が一部次年度繰越となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
病院の個別面接調査の交通費と謝金、ならびに調査結果のデータ入力とデータ整理の人件費として支出する予定である。
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