2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26700016
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
妹尾 武治 九州大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (40546181)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 実験心理学 / バーチャルリアリティー / ベクション / 知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
ベクション観察時の被験者の体位の安定性について2014年度は、実験を行った。これまでのベクション研究では、椅子に座った状態で実験を行うことが一般的であった。Seno (2014)では、椅子に座った状態で、顔と胴体部分の向きを体を回転させて不一致にすることの効果を報告している。本年は、そこからさらに発展させ、乗馬型マシンで体を揺すられながら、揺り椅子で体を揺すられながら、バランスボールの上に座りながら、振動マシンで足裏に一定周期の振動を与えながらという4つの特殊な観察体位でベクションの強度がどう変化するのかについて検討を行った。ベクションは、一般的な光学的流動刺激を用いて十分な強度のものをひき起した。この刺激は、過去の筆者の実験で効果が十分にあることが担保されていた。条件は上記4つの特殊観察体位に加えて、静止した一般的な椅子に座ってベクションを観察するという5条件が存在した。ベクション刺激の提示時間は40秒であり、この間、ベクションが生じた場合に被験者はボタンを押し続け、その持続時間、潜時を計測し、さらに刺激提示終了後に主観評価を行ってもらった。その結果、不安定な観察体位においては、概ねベクションを強めるという効果があることがわかった。乗馬マシンでも、揺り椅子でも、バランスボールでも、ベクションが強くなるという結果が得られた。
同時並列して、関連するベクションの実験も進めており、それらについては、一定の成果が得られている。具体的には、乗馬型マシンを使い、風を顔に当てることで得られるベクションについての成果は論文の形になっている。また、視覚剥奪という特殊な観察環境における効果も論文になっている。さらに、刺激の意味がベクションに及ぼす影響についても、成果が論文の形になっている。主軸に据えた研究以外にもベクションの総合的な理解のために多数の実験をしており、一定の成果となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究費の大半を一名の学術研究員の雇用に充てている。小川将樹さんである。小川さんの学位取得がずれ込み、2015年の3月にようやく学位取得が実現した。本来は、2014年の夏までには学位取得が完了するはずであったが、進展が悪く大幅に遅れてしまった。
そのため、若手Aの業務のエフォート率が十分に避けない状態が1年間続き、彼の学位取得の妨げになるような要求は強く出来なかった。その結果、実験自体は、妹尾が主導で行ったが、その成果を論文の形にまとめ、投稿し、査読を経るという事態まで、研究を進展させることが出来なかった。監督責任は妹尾にあり、妹尾がもっと主導して実験を進めるべきであったというご指摘はごもっともであるが、妹尾もテニュアトラック制の教員として、他にエフォートを割かざるを得ない状況であり、そのためにこそ、小川さんを雇用したのである。しかし、その雇用が1年間十分に機能しなかった。しかし、2015年度は、小川氏は学位を取得したため、若手Aに全力で取り組んでくれることになっている。遅れを取り戻し、研究実績を論文や学会発表の形で、しっかりと残して行けるように尽力することを誓う。
先に記述したようにこれまでにある程度の実験は成功している。しかし、上記の4条件に対する妥当な統制条件の設定に問題があると筆者は感じており、まだまだ改善が必要である。具体的には、4条件において、刺激までの観察距離がそろっていないこと、目線の高さがそろわないことが問題であり、刺激の物理的な特性に統制条件と実験条件で高い一貫性がまだ無い。この点を今後改善して行きたいと考えている。さらに、5条件を被験者内要因で行ったため、実験の意図が被験者に予想されてしまうと言う問題もあり、克服すべき課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、観察体位の実験について、実験をより洗練させ、被験者数を増やしよりよりデータを取得したい。観察体位の効果があることは既にこれまでの実験で明らかにしているので、あとは、同じ実験を繰り返し行えば良い。また、実験を行うだけでなくそれを論文や学会発表と言う明確な成果の形に押し上げねばならない。その辺りに時間を割きたい。小川氏との協力関係の中で、成果を上げる年にせねばと痛感している。
計画書では、2015年度には、ベクション刺激と色の関係について、実験を行うこととなっていた。これについては、2014年度の計画の観察体位の実験が成果として形になるまでは、第一課題として注力は出来ない。ではあるが、同時並列的に進めて行きたいと考えている。観察体位の実験が終るまで、色の実験を進めないということはせずに、可能な限り同時並列し、論文の査読作業として、その難易度によっては、色の実験の方を先に形にすると言う可能性もありうる。
色の実験について簡単に説明すると、多色環境におけるベクションは促進効果があるという先行研究が存在する。しかし、先行研究で用いられた多色環境はグレースケールか、6色の配置かの違いだけであった。そこで、1色から100色程度を用意し、それらをランダムに配置するというより広範な意味での多色環境でベクション刺激を作成したい。研究の最大のうりとしては、刺激の物理的な多色状況だけでなく、主観的な「カラフルさ」をマグニチュード推定法によって取得し、その主観的なカラフルさとベクションの強さが相関するかどうかについて実験で明らかにしたい。さらに、色覚異常、色盲の被験者を用いて、健常色覚者との比較も重要な側面だと認識している。
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Causes of Carryover |
9割以上を人件費(ポスドク1名雇用)に充てている。そのため、事務部より、保険費など年度末に調整があったり、急な休暇などが生じることもあり、10万円程度、人件費に関していざという際に動かせる遊び幅を設けておくように指導を受けていた。 3月末になり、休暇など諸々を調整した結果その遊び幅の分の正確な残高が30732円であることがわかった。この額を文房具など必要性のあまり高くないものを購入することで調整して0にすることは可能であったが、それよりはむしろ、次年度に繰り越し、旅費の一部として充てることが、ポスドクとの成果を上げるためにはより有効と考えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
9割が人件費であるため、ポスドクの成果発表のための出張に使える旅費が非常に限られている。そのため、30732円は、旅費に充てたい。国内の一往復相当になると考えている。
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Research Products
(6 results)