2015 Fiscal Year Annual Research Report
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26700016
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
妹尾 武治 九州大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (40546181)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 実験心理学 / バーチャルリアリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
多色環境刺激によるベクションの実験では、6色のマルチカラーで構成したオプティカルフロー(拡散するドット刺激)と、その刺激のグレースケール版とでベクション強度を計測した。その結果、マルチカラー条件で有意にベクションが弱くなる事がわかった。この成果について、Colorful stimuli might inhibit vecton.Ogawa, M. & Seno T.Transactions of the Virtual Reality Society of Japan Vol.21, No.1, 2016 という査読有り論文の形で報告を行った。 次に、観察体位の効果については、グーグルカードボード(ハコスコ)を用いて、360度頭部を回転させても刺激が提示され続けるVR状態のベクション刺激を開発した。その結果、自由に体を動かし、頭を動かして刺激を観察する方が、座って静止している観察状態に比べてベクションをより強く誘発出来ることがわかった。この成果については、A New Vection Stimulus: Immerse yourself in vection.Seno, T. & Yoshinaga, T. Transactions of the Virtual Reality Society of Japan Vol.21, No.1, 2016 という査読有り論文の形で報告を行った。 最後に発達に関しては、中学生を被験者にしてベクションを計測した。その結果、中学生ではより強いベクションを感じている事が明らかに出来た。この成果はShirai, N., Imura T., Tamura, R. & Seno T. Stronger vection in junior high school children than in adults. Frontiers in Psychology, 5, Article 563 (2014) という査読有り論文の形にしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、申請書に記載した、色の効果、発達的側面、観察体位については、それぞれ1編ずつ査読有り論文の形にして、成果を世界に発信出来た。引用数もそれなりにあり、国内外にベクション研究の意義を発信で来たと自負している。同時に、上記3点の研究トピックについては、まだまだ発展させて取り組む事が可能である。特に観察体位については、まだまだバリエーションがある(具体的には、片足立ちや逆さ吊り状態)。色についても、もっと色数を増やす事も出来る。発達については、幼稚園保育園児にも実験の意味が理解出来るようなプロトコルを発明出来れば、大きな発展が望めるはずである。 2015年度には、3件の招待講演においてベクション研究について発表を行うと言う実績もつめた。国内外での口頭発表ポスター発表も適宜行っており、プレゼンスを示し続けている。 一つ思うように進んでいないトピックがある。それは、反復経頭蓋磁気刺激法、rTMS (Repetitive transcranial magnetic stimulation)をつかったベクションの脳内基盤を探る研究である。この研究は、被験者の同意が取りづらく、かつ連続して長時間の実験を行わねばならず思うように進展が得られていない。これについては、最終年度になんとか、解決し大きな成果に結びつけたい。
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Strategy for Future Research Activity |
まず発達研究については、これまでに小学生、中学生のデータを取得して来た。さらに大人のデータとして大学生のデータも多数保管している。欠落しているのは、高校生のデータである。そこで、高校生のデータを取得し、ベクションと言う一つの知覚現象を発達段階の全てを語れる状態にしたいと考えている。また、発達については、これまで幼稚園児、保育園児のデータの取得が行えていない。それは、彼らが理解出来る実験のプロトコルが発明されていないためである。何らかの方法でこの点を解決し、大きな成果に繋げたいと思っている。 次に、観察体位についてであるが、VR(AR)刺激をこれまでに用いているが、これをさらに発展させて行きたい。より多く体を動かせる状態を作り、身体運動のベクションに及ぼす寄与についてより明らかにして行きたい。片足立ちや、仰向け、逆さつり下げ、などのシンプルな体位から複雑で非日常的な体位まで横断的に調べて行ければと思っている。 色刺激については、これまでは6色の多色刺激であったが、この数をもっと膨大に増やした時(例えば100色刺激等)どうなるのかについて興味があるため、刺激を作成し実験を行って行きたい。 反復経頭蓋磁気刺激法、rTMS (Repetitive transcranial magnetic stimulation)をつかったベクションの脳内基盤を探る研究についても、被験者数は少ないかもしれないが、繰り返し試行数を増やす事で、少ない被験者数からでも十分に科学的な発言が出来るようなデータの取得を引き続き鋭意努力して行きたい。
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Causes of Carryover |
人件費が大半であるため、年度末の税金の調整を行う必要があり、 微細な金額の調整のため、全額を使い切ることが出来なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度も人件費を中心にあてることを想定している。
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