2016 Fiscal Year Annual Research Report
運動データベースからロボットの実世界運動制御への展開
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26700021
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高野 渉 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (30512090)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 知能ロボット / 運動制御 / 統計モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,膨大な運動データの記憶とその記憶を再利用する制御という観点から,実世界で多様な運動を生み出すロボットの知能制御論を構築することを目的としている.人間の動きは多様である.この多様性は環境の複雑さに起因する.環境に応じて適切な種類の運動を実行することと,同じような環境であっても微妙な違いに適応した運動を生成することが,多様な運動として現れる.そして,人間と実世界で共生することが期待されるヒューマノイドロボットにおいても,状況に応じて多様な動きを作りながら様々なタスクを遂行することが必要である.状況に応じた運動を蓄積したデータベースを創り上げることで適応するべき環境の種類の多さを克服し,身体と環境の間をつなぐ作用・反作用といった力を適切に維持するための運動の修正・制御法を開発することによって,環境の変動の多様さを吸収する枠組みを構築する. 平成28年度の成果は,以下の3点として纏められる. (1) 環境との接触,物体操作などの観点から手の運動に着目し,指の動きや掌や指に作用する接触力を計測する環境を整えた.全身運動と同期して,指の関節角度や手の表面の圧力分布を蓄積したデータベースを構築した.(2) 身体運動,環境から身体が受ける外力,操作する物体の情報を学習した統計モデルを提案した.統計モデルから物体に応じて学習したときと同じような身体運動と接触力を実現するような制御方法を開発した.(3)ヒューマノイドロボットを用いたタスク遂行実験を行った.遠隔操縦時にてヒューマノイドロボットを制御しているときのロボットの運動・環境からの外力.カメラ映像をデータベースに記録し,それを統計モデルによって学習した.統計モデルからの自律的に運動が生成・制御できることを実証した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では,運動・力学・視覚の膨大なデータを記録したデータベースの構築,記録データを学習する統計モデルの設計,統計学・運動力学・制御工学を横断する統計と運動制御の数理的枠組みを構築することによって,日常生活の多様な場面で活躍するヒューマノイドロボットの知能制御の基礎を固める.平成28年度では,以下の研究開発を実施した. (A-3)これまでの全身の運動を蓄積したデータベースを構築してきた.このデータベースを指の動きや手の表面に働く接触力へ拡張した.指の動きに関しては,ひずみセンサ方式のグローブを用いて指の関節角度を記憶する.また,手の表面に働く接触力に関しては,80個の圧力センサを敷き詰めたシートを掌に付けることによって,表面に垂直に作用する圧力分布を計測し,それをデータベースに蓄えられるようにした. (B-4)身体運動,身体に働く外力,および環境の視覚情報の時系列を統計モデルによって学習する枠組みを開発した.ロボットのカメラにて知覚された環境データからその環境に合致した統計モデルを選択し,統計モデルから身体の位置・姿勢・手先反力の目標値を計算する.手先反力の実測値と目標値の誤差に応じて位置・姿勢の目標値を修正し,それに沿ってロボットの運動を制御する.学習したときと同じように環境に力を加えることで物体操作を実現できる方法である. (C-2)等身大ヒューマノイドロボットを用いて提案した制御方法の有効性の実験を行った.「ボールを転がす」,「箱を動かす」,「ビーズの集合を掃う」,「机を拭く」タスクを学習した.ハプティックデバイスを利用して,ロボットを遠隔操作し,そのときの手先位置・姿勢・反力およびカメラ映像を記憶し,学習データとして使用した.学習した統計モデルを用いることによって,ロボットの前にある物体を認識しながら適切な運動モデルを選択して,動きを生成できることを確認した.
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Strategy for Future Research Activity |
運動・力学・視覚を統合した統計モデルを設計し,統計モデルから学習時と同じようなインピーダンスを実現するための運動生成・制御法を開発してきた.ヒューマノイドロボットに実装し,物体操作を遂行する実験を行うことで解決すべき以下の問題をが明らかになった. (1) 計測・制御のサンプリングレートの問題:現在,手先位置・姿勢・反力・視覚の学習データを30msで計測し,それを学習データとして使用している.すなわち,統計モデルから生成できる目標値の時間間隔も30msである.しかし,この時間間隔で力を制御するとロボットの運動が不安定になり,学習したときの動きや接触力を実現できないときがある.現状のシステムでも,位置・姿勢・反力は2msまで計測時間を高めることができる.視覚情報の高速処理化,時間分解能の向上に伴い膨大する学習データを用いた統計モデルの最適化計算の効率化,統計モデルを用いて視覚情報から手先位置・姿勢・反力の目標値を生成するフィードバックループの高速化を実現することによって,安定したロボットの制御を達成することが求められる.(2) ヒューマノイドロボットの実験では,タスクの運動が終わるまで次のタスクへ移行できない.時々刻々タスクを推定しながら,タスクの切り替わりを検出して,タスク遂行の途中にて新しい状況に応じた運動を生成するに至っていない.視覚情報を常に取り込みながらその計測値が生成される確率が最大となる統計モデルを見つけ,そのモデルから運動を生成することは理論的には可能である.しかし,センサデータのばらつきなどを勘案して,統計モデルが頻繁に切り替わり,ロボットの運動が不連続かつ不安定になることが想定できる.安定してタスクを切り替えながら運動を生成する方法を開発する必要がある.
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Causes of Carryover |
ヒューマノイドロボットを遠隔操作しているときのデータを記録して学習データとして使用している.平成28年度では,限られた数のタスクを遂行しているときのデータしか集めることができなかった.多くの人に遠隔操作をしてもらってのデータ収集やそのデータの整理などを進める予定をしていたが,膨大なデータ収集のための実験に至らなかった.データ収集・整理の計測実験は次年度行う.
手先の細かい動きを計測するために適したIMUセンサーを購入する予定であった.購入予定のセンサシステムが,求めている計測精度を実現するに至らず,購入を見合わせた.他の方式のセンサーも含めて,手先の動きが計測できるセンサーの購入を検討する.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
多くの被験者によるロボットの遠隔操作時のデータ収集を行う.計測したデータに動きのレベルを貼り付けて,効率的にデータをグループに分け,統計モデルにて学習できるようにデータの整理を行う.その被験者およびデータ整理作業の人件費として使用する計画である.
指先の動きを計測する高解像度カメラもしくはIMU式センサーを購入する.カメラの場合,画像処理によって指の運動を推定するアルゴリズムを開発しなければならないが,その点も勘案して,最適なセンサーの選定を行って購入手続きを進める.
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Research Products
(10 results)