2015 Fiscal Year Annual Research Report
流域内に連鎖する水利施設群が水系物質動態に及ぼす複合的影響の解明
Project/Area Number |
26701013
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田代 喬 名古屋大学, 減災連携研究センター, 准教授 (30391618)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 生態系代謝 / 水系物質動態 / 溶存酸素濃度 / 水利施設群 / 流れ込式水力発電 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、流域内に連鎖的に存在する複数の水利施設が、それらによって変質した水域生態系過程を介して、水系物質動態に及ぼす複合的な影響を明らかにする。 平成27年度は前年度までに観測・評価を実施した山地域の小渓流から調査範囲を拡大し、水系内に広く連鎖的に配置された、流込み式水力発電システムが水域生態系に及ぼす影響を対象とした。流込み式水力発電は、堰堤から取水した水を下流方向に設置された発電所まで水路で分派して流し、この間に稼いだ主流路との落差と取水量による位置エネルギーを利用した、再生可能かつクリーンな発電方式であり、山間地に連鎖的に配置されることが多い。大きな落差と多くの水量の確保が発電には有効であることから、平常時には流下方向に連続的、あるいは、断続的な低流量区間が生じるため、生態系への影響が懸念される。 調査地とした矢作川支川巴川水系には、巴川に4つの堰堤と発電所、支川に2つの発電所と3つの堰堤が存在している。平成27年度の調査では、前年度に引き続いて水域内の代謝構造に着目し、巴川において堰堤からの取水と発電所からの放水による影響を、支川の神越川において堰堤群からの連鎖的取水による累積的影響を調査した。調査項目は、水位、電気伝導度、溶存酸素濃度の連続観測、水中の栄養塩濃度の計測と付着藻類、魚類などの現存量、生息密度である。調査結果にオダムの代謝理論を適用して各地点における一次生産速度や群集呼吸速度を算定した結果、生産速度の小さな渓流河川の生態系は、発電取水による減水の影響により生産速度が卓越するなどの代謝の変質を引き起こす一方、発電所からの放流水による影響の緩和効果は限定的であることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度より研究代表者の身上に変化があり、(同じ大学内ながら、)教育担当の専任教員から研究専従型の寄附研究部門教員への配置換えがあった。この職務変更に伴い、これまでのように大学院生を研究協力者とする実施体制を構築することがやや困難となった。そのため、申請当初に見込んだ研究計画のうち、長期の現地観測を要する一部の調査については内容変更した部分もあるが、平成27年度については、自記式の水質計測機器などを最大限活用することにより、マンパワーの不足を補うことができたものと思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究代表者らの職務変更に伴った実施体制の調整に関しては、現地調査に使用する機器の変更による効率化を図ってきた。平成26~27年度に導入した、高精度ドップラー式3次元流速計、UAV(Unmanned Aerial Vehicle、無人航空機)、自記式水質計測機器、オートサンプラ付イオン分析計に関しては、いずれも精度・解像度の高い情報を効率的に取得できる機器となっている。今後もこうした機器を積極的に利用することによって、マンパワーの不足を補いながら調査研究を継続して進めていく予定である。
|
Causes of Carryover |
平成28年度に予定している補助金交付予定額が平成26、27年度に比べて少なかったため、これまでに導入した機器の調整など、維持管理に充てる費用について不安を感じたため、学術研究基金助成基金分を少額残すこととした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26、27年度に導入した各種計測機器の調整費に充てる予定である。
|
Research Products
(2 results)