2014 Fiscal Year Annual Research Report
低頻度巨大高潮によるメコンデルタ都市の激甚水災害リスクの研究
Project/Area Number |
26702009
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
高木 泰士 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (40619847)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高潮 / 洪水 / 浸水 / 低平地 / 台風 / 潮汐 / ベトナム / メコンデルタ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は,メコンデルタ最大の都市カントー市において3度現地調査を行った.目的は,高潮のメコンデルタへの遡上・伝播を解析的,数値的に検証する際に必要となるデータを取得すること,および現時点での都市部の洪水被害や住民の洪水に対する意識を把握することであった.主たる調査項目は,河川の水深,水位変動,また50世帯ほどを対象に洪水に対する意識調査を行った.水位変動については,地元研究者の協力を得て,カントー市を通るハウ川の中州に水位計を設置した.また,都市部の標高をレーザー距離計を用いて詳細に計測した.河口部のディンアンとカントーの2地点で水位データを入手できたため,この2地点の水位変動の振幅及び位相を分析し,2地点間の潮汐伝播や振幅減衰,位相速度を計算した.また,各点での水位をフーリエ解析により周波数分析を行い,併せて天文潮の動態にもとづく調和解析を行った.これらの検討により,水位変動に及ぼす主成分の分析を行い,都市部の洪水との関係を調べた.また,標高計測データを解析し,標高値を算出し,都市部の数値標高モデル(DEM)を作成した.この数値標高モデルを使用したカントー市の浸水解析を実施するため,ハウ川の広域モデルとカントー市周辺および都市部の詳細モデルの2種類の地形モデルの作成を開始した.また,メコンデルタの高潮研究に資する目的のため,平行して2013年11月にフィリピンを襲った台風ハイヤンによる高潮についての調査,研究を推進した.このため,フィリピン・レイテ島において2度の調査を実施した.また,台風ベストトラックデータを利用して,ベトナムに上陸した過去の台風の頻度や強さを検証した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は,メコンデルタの中心都市であるカントー市の洪水被害の状況を明らかにすることができた.洪水・浸水は,潮汐変動が主要因で,これに加えて雨季の河川流量が重畳することで都市部においても顕著な浸水を引き起こすことがわかった.現在,年間2.5%程度の時間帯で浸水が発生しており,大部分が雨季の時期に発生している.しかし,将来海面上昇が進行すると,今世紀末には24%程度の時間帯で浸水が発生し,その時期は雨季のみでなく,乾季でも常態的に発生することを示した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究により,メコンデルタの洪水・浸水の実態解明は順調に進んでおり,平成27年度は高潮に着目した研究にシフトしていく.このため,フィリピンを襲った台風ハイヤンによる高潮や北西太平洋の過去の台風を分析し,高潮予測モデルの高度化を進める.また,平成26年度のカントー市の調査で,河川から下水管を逆流することにより,都市部において浸水が発生するメカニズムが無視できないことが明らかになった.このため,下水菅についてもモデリングを進め,地表面洪水と内水氾濫の両者を統合的に評価していく.
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Causes of Carryover |
出張旅費に他予算を活用することができたため,平成26年度は旅費の使用が大幅に減ったため。また,当初購入予定の計測機材は,現地での設置において盗難の恐れが高いことが判明したため,そのリスクも考慮して,より安価なセンサーへと変更したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度および28年度は,解析や現地調査を一層と進めるため,繰り越し予算はコンピューターの増設や計測機材の購入へと使用する。
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