2016 Fiscal Year Annual Research Report
低頻度巨大高潮によるメコンデルタ都市の激甚水災害リスクの研究
Project/Area Number |
26702009
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
高木 泰士 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (40619847)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | メコンデルタ / 高潮 / 潮位 / 地盤沈下 / 急流 / ベトナム / 浸水 / 河川 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は,メコン・Hau河のDinh An, Can Tho,Chau Docの3地点の水位観測データを入手し,このデータに基づき過去20年の水位変化を分析した。この結果,ベトナム・カントー市では年平均22mmの水位上昇が検出された。この要因の一つは,温暖化に伴う海面上昇や海水準変動と考えられる。しかし,同時期のベトナム沖海面上昇量は年間5mm程度であり,17mmの差異を十分に説明できない。また,長期の潮位トレンドについても分析したが,顕著な上昇傾向は確認されなかった。今後検証をさらに進める必要があるが,地盤沈下がこの大きな要因であると考えている。このような分析ならびに本研究で開発してきたメコンデルタの潮汐解析モデルを活用し,カントー市の将来の浸水日数の増加を予測した。その結果,2009年-2010年時点では72日であった浸水日数が,2029年-2030年では270日,2049年-2050年では312日に急拡大していく可能性が示された。また現時点では浸水深は最大でも20~30cmの場所が多いが,今世紀半ばには1mを越えるような場所が増えてくるため,この地域の経済・社会に甚大なインパクトを及ぼすと考える。この成果を国際ジャーナル(Sustainability)で発表した。また今年度は,高潮が発生した際にどのような激しい流れが発生するかを検討するため,現地調査と数値解析により流況特性を検証した。この結果,支流で特に著しい流速が発生しうることを明らかにした。これは上流からの河川流と上げ潮時の潮汐流が合流し,支流に流れ込むためである。この急潮現象については国際ジャーナル(Int. J. of Safety and Security Eng.,)で発表した。高潮時には急流の影響がさらに増幅されると考えられるため,今後更に研究を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は,本研究の成果を2編の国際ジャーナルとして発表することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,過去最大の被害を及ぼしたといわれる1997年台風Lindaについて現地調査,住民インタビューを行い,その実態解明を行う。また平成28年度に明らかになった支流での急潮現象について更に詳しく調査を行い,数値解析モデルの更なる向上を行う予定である。
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Causes of Carryover |
出張について一部他予算を活用することができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
追加の調査を実施する。
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