2016 Fiscal Year Annual Research Report
超高速ミー散乱増強光の多光子過程による再生医療用薬剤放出技術の研究
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26702019
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
寺川 光洋 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (60580090)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | レーザー医療 / フェムト秒レーザー / ドラッグデリバリー / 生分解性ポリマー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は(1)レーザー照射による生分解性ポリマーカプセル内包分子の放出、(2)その物理理解のためのレーザー照射と生分解性ポリマーの相互作用の研究、(3)レーザー照射による生分解促進に伴う材料含有分子の放出を実施した。上記(1)では、同軸ノズルを用いてポリ乳酸グリコール酸共重合体のマイクロカプセル内に擬似薬剤としてFITC-dextranを内包させる技術を確立し、同技術により作製したマイクロカプセルにフェムト秒レーザーを照射することで内包分子放出を実験実証した。また、バーストリリースに寄与すると考えられるレーザー照射によるマイクロカプセルの消失だけでなく、マイクロカプセル外殻の表面改質が観察された。これらの結果を考察するため、(2)ではフェムト秒レーザー照射後の生分解性ポリマーの生分解性がレーザー波長により変化することを明らかにした。波長800 nmのレーザー加工痕ではリン酸緩衝生理食塩水に6日間浸漬後まで表面形状がほとんど変化せず、波長400 nmでは2日間浸漬から顕著な生分解促進が示された。多光子イオン化が支配的となるレーザー照射条件では多光子吸収を介した化学結合の切断に伴い顕著な生分解促進が生じ、トンネルイオン化およびBarrier suppressionイオン化が支配的となるレーザー照射条件では化学結合の直接的な切断ではないために生分解性の変化が小さいのではと考察した。この成果は、本技術がバーストリリースだけでなく薬剤徐放にも寄与する可能性を示すとともに、薬剤放出足場構造の生体内残存時間をレーザーの波長により制御できることを示唆している。また、(3)では材料内に蛍光分子を含有させることで、マイクロカプセルと足場材の複合放出機構を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、ゲスト分子内包カプセルへのフェムト秒レーザー照射による分子放出を実験実証し、さらにその相互作用物理を明らかにした。マイクロカプセルからのバーストリリースに加え、薬剤徐放につながる結果が得られた。成果は複数の英語原著論文として公刊し、複数の招待講演を行う等、当該成果が国際的に評価されていると考える。研究実績の概要に記載の通り最終年度に向けて土台となる研究結果が得られているため、研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は本研究の最終年度であるため、未達成技術の完成ならびに成果の取りまとめに重点を置く。具体的には、着手済の薬剤放出機能を備えた足場構造の作製を継続し、放出分子内包カプセルを含有する三次元構造の作製、フェムト秒レーザーをトリガーとした薬剤放出量の計測、照射条件の最適化を実施する。また、作製構造を足場とする三次元細胞培養を行い、当該技術による細胞接着・増殖・分化の促進を評価する。
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Research Products
(10 results)