2014 Fiscal Year Annual Research Report
筋の至適方向に基づく上肢リハビリテーション手法の開発:ロボットによる支援と定量化
Project/Area Number |
26702023
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Research Institution | National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
植山 祐樹 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 障害工学研究部, 流動研究員 (30710800)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | リハビリテーション / ロボティクス / 生体工学 / 神経科学 / 筋肉生理 / 運動制御 / 至適方向 / 作業療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では脳卒中片麻痺による上肢の運動機能障害を対象とし、筋活動の至適方向(PD: Preferred direction)に基づいたリハビリテーション手法の確立、およびそれを支援するためのロボット技術の開発を目的としている。
平成26年度は、神経細胞および筋活動の至適方向(PD: Preferred direction)の特性に着目した新たなリハビリテーション手法を提案し、脳卒中片麻痺後の機能回復過程を再現した数値実験によって提案手法の有効性を検証した。数値実験では、神経回路モデルおよび筋骨格系モデルによって脳卒中後の機能回復モデルを構築した。構築したモデルでは、正常な状態においてサルを使った電気生理学実験によって確認されている結果と同様に第2象限および第4象限に拡がる神経細胞のPDの分布が再現された。続いて、正常な状態から主に肘および肩の進展動作に寄与する神経細胞を排除し、それを脳卒中後の状態として定義した。そのように定義した脳卒中モデルに対して、関節の目標トルクと出力トルクを一致させるように神経回路を学習させることで、リハビリテーション過程を再現した。その結果、欠損した領域のPDが回復することはなく、正常時の状態とはかけ離れた形状となった。これは、通常の機能回復過程では、上肢のリハビリテーションに不十分である可能性を示すものである。一方で、提案する筋活動PDに基づいたリハビリテーション手法を用いた場合には、通常の機能回復過程よりも良好な結果となり、正常時の状態に類似した神経細胞PDの状態を回復することができた。
今後、計測実験によって計算モデルおよび提案するリハビリテーション手法の検証を行うとともに、それを実現するためのロボット技術の確立を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度は、脳卒中片麻痺による運動機能障害が筋活動のPDに与える影響を明らかにするための準備段階として、上肢の筋活動のPDを計測するための上肢運動計測装置を構築し、健常者を対象にした計測実験を実施することを計画していた。しかし、上肢運動計測装置を構成するロボットアーム型力覚提示装置の選定および調達に予想以上に時間が取られてしまい、平成26年度内において上肢運動計測装置の構築は完了したものの、健常者を対象とした計測実験を実施することができなかった。現在、平成27年度の早い段階で計測実験を実施できるように準備を進めており、一刻も早く遅れを取り戻したいと考えている。
一方で、本研究で提案するリハビリテーションの効果について筋骨格系モデルを用いた数値実験によってその有効性を示した。さらに、リハビリテーション支援ロボットについては、すでに詳細な仕様の検討も進められている。これは平成27年度の実施を予定していたものであり、当初の計画よりも早く進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では脳卒中片麻痺の障害当事者を対象とした筋活動PDの計測実験、およびリハビリテーション支援ロボットの開発を平成27年度に計画していた。しかし、実験装置の導入および実験環境の整備が思うように進まなかったことから、障害当事者を対象とした実験の前の段階として予定していた健常者対象の実験を平成26年度に実施することができなかった。平成27年度はその遅れを取り戻すために、実験の準備を早急に完了し、健常者および障害当事者を対象とした実験を完了させる予定である。
一方で、リハビリテーション支援ロボットの開発については、当初の予定よりも早く進行しているため、現在のペースを崩さないようにし、平成27年度内での完成を目指す。そして、平成28年度には、開発したシステムの評価実験を健常者および障害当事者を対象に実施する予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度に予定していたリハビリテーション支援ロボットの開発に想定以上に予算が必要となることが判明したため、その金額を確保するために、平成26年度に導入した上肢運動計測装置の構築費用を節約し、平成27年度に繰り越したために生じた。
また、平成26年度の実施予定であった実験も今年度に行うこととしたため、あらかじめ見積もっていた人件費・謝金についても平成27年度に繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度の繰越金額は、平成27年度に開発するリハビリテーション支援ロボット装置の開発費用として使用する予定である。
また、平成26年度に実施予定であった実験についても平成27年度に実施することにしたため、その分の人件費・謝金としても使用する。
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Research Products
(4 results)