2015 Fiscal Year Annual Research Report
筋の至適方向に基づく上肢リハビリテーション手法の開発:ロボットによる支援と定量化
Project/Area Number |
26702023
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Research Institution | National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
植山 祐樹 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 障害工学研究部, 流動研究員 (30710800)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ロボティクス / リハビリテーション / 生体工学 / 神経科学 / 筋肉生理 / 運動制御 / 作業療法 / 脳卒中片麻痺 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では脳卒中片麻痺による上肢の運動機能障害を対象とし、筋活動の至適方向(PD: Preferred direction)に基づいたリハビリテーション手法に加え、それを支援するためのロボット技術の開発を目的としている。
当該年度は、上肢リハビリテーション支援ロボットの開発を行った。開発したロボットは3つのモータを有し、肩、肘および手首の各関節に独立したトルクを生成することで、運動の支援、または運動負荷を与える事が可能である。その際、各関節はロボットに内蔵された組み込み型のコンピュータによってリアルタイムに制御される。さらに、肘および肩関節をハードウェア的に連動させることで協調動作を実現する二関節筋機構を有しており、本研究において提案されるリハビリテーション手法の検証および実践に使用することが可能である。 一方で、健常者および障害当事者を対象に、提案するリハビリテーション手法に検証を行うために実験環境を構築し、予備実験を実施した。その結果、現在の実験環境では不十分であることが判明したため、実験条件等の詳細な見直しが必要であることが明らかとなった。今後、実験環境を改善し、本来の目的であった検証実験を早急に実施する予定である。
その他、昨年度までの研究成果は、すでに国際学会等においても発表しており、最終的にそれらの内容を3本の論文としてまとめ、すべて国際学術誌に投稿済みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、(1)健常者および脳卒中片麻痺患者を対象とした上肢運動中の筋活動PDの計測によるリハビリテーション手法の検証、ならびに(2)本研究において提案するリハビリテーションを実現するための上肢リハビリテーション支援ロボットの開発が目標であった。
(1)では筋活動PDを計測する実験環境を構築し、健常者を対象とした予備実験を実施した。しかし、その結果、予備実験で使用した実験環境では目的としていたリハビリテーション手法の検証に不十分であることが判明し、実験条件等の見直しが必要となった。そのため、本来の目標は達成できていないが、実験に不可欠となる新たな要件が明らかとなったことから、研究としては十分な進展があったと考えている。
(2)では、肩、肘および手首の関節に独立した外的なトルクを付与することが可能な上肢リハビリテーション支援ロボットを開発した。開発されたロボットは、筋活動のPDに基づき、運動を支援または阻害することで筋活動のPDを任意に操作し、一次運動野および運動生成に関わるその他の脳部位に対し、脳の可塑性に基づいた再学習を促進することで効率的な機能回復の実現を目指している。今後、ロボットの制御ソフトウェアの開発および必要に応じたハードウェアの改良を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
見直しを行った新たな実験条件において、健常者および脳卒中片麻痺患者を対象に本研究課題において提案するリハビリテーション手法の検証実験を実施する。その際に、手先座標系および関節座標系における筋活動のPDを計測し、健常者および障害当事者における筋の至適方向の差異を比較することで、脳卒中が筋のPDに与える影響を明らかにする。
また、開発した上肢リハビリテーション支援ロボットの制御ソフトウェアを開発するとともに、そのロボットを用いて腕の各関節に外力を付与することで、筋のPDが外的な作用によって変調可能であることを示す。これによって得られた結果は、今後、本研究課題において提案したリハビリテーション手法に関する臨床実験を行う際の重要な根拠となると考えている。
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Causes of Carryover |
異動によって研究環境が大きく変化することが予想されたため、異動先への研究環境の移設および新たな研究環境の構築に係る費用が不確実であった。そのため、計画以上に多くの費用がかかる事態に備え、次年度使用額を計画よりも余分に確保する必要があったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当該年度の繰越金額は、今年度に予定している実験のための環境構築費用および実験協力者に支払う謝金として使用する予定である。
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Research Products
(4 results)