2015 Fiscal Year Annual Research Report
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26704001
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
熊谷 誠慈 京都大学, こころの未来研究センター, 准教授 (80614114)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ブータン仏教 / ドゥク派 / ツァンパ・ギャレー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、1. 文献研究および、2. フィールド研究により、ブータン仏教の歴史・思想・現状を総合的に解明する(基礎研究)。その上で、3. 学際研究により、ブータン仏教の社会への応用性についても検討する(応用研究)。 【1.文献研究(歴史・思想)】ブータン仏教のうち、「ドゥク派」と「ニンマ派」という2大宗派の歴史についてはすでに多くの研究がなされてきた。一方で、その思想については多くの部分が未解明である。とりわけ、ドゥク派の開祖ツァンパ・ギャレー(1161-1211)については、テキストへのアクセスが長らく困難であったこともあり、その思想の大部分が未解明のままである。2年次(平成27年度)には、ツァンパ・ギャレーの伝記およびカギュ派史についての著作の校訂テキストの作成および試訳を大幅に進めることができた。また、これまでほとんど研究されてこなかった少数宗派の歴史についても研究を進め、ブータンにおけるサキャ派の歴史について検証を進め、第4回国際チベット学会にて口頭発表を行った。 【2.フィールド研究】2年次(平成27年度)も、サキャ派やゲルク派など、ブータン仏教の少数宗派の現状についての現地調査、情報分析を行った。さらに、昨年度に進めたインド共和国アルナチャル・プラデーシュ州のタワン県・西カメン県に広がるゲルク派・ニンマ派地域との関係性について情報を整理した。 【3.学際研究】ブータンの国民総幸福(GNH)政策は世界的に有名であるが、同政策についてはこれまで主として開発学や経済学的視点から研究が進められてきた。本研究課題では、同政策の基底にみられる仏教思想について検証を行い、文化・社会にみられる仏教思想の応用性を検証し、第6回国際GNH学会にて口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年次(平成27年度)は、文献研究、フィールド研究、学際研究のいずれも概ね研究計画どおりに推進することができ、研究成果の一部については、すでに学会や研究会において口頭発表をした。また、現地調査等により、研究開始前には知りえなかった情報を新たに得たことで、3年次(平成28年度)以降の研究内容にさらに厚みを持たせることが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
3年次(平成28年度)以降も、文献研究、フィールド研究、学際研究という3つの柱に沿って研究を推進していく。文献研究については、ドゥク派の開祖ツァンパ・ギャレーの著作集(計4巻)の第1巻および第2巻の下原稿を完成させる。フィールド研究については、ブータンのサキャ派の全寺院の調査情報を整理、解析する。学際研究としては、ブータンにおける幸福・平和政策と仏教思想との関連性について、異分野の研究者とともに考察を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度11月にインド共和国アルナチャルプラデーシュ州において開催予定であった国際シンポジウムが中止となったため、参加を予定していた研究代表者および招へい候補者の渡航がキャンセルとなり、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度に国際チベット学会でブータンに関する学術部会を主催するため、27年度にキャンセルとなった国際シンポジウムに参加予定であった招へい候補者を、同学術部会に招へいし発表をしてもらう。加えて、日本にも招へいをし、共同研究を行う。
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