2014 Fiscal Year Research-status Report
19世紀前半のイギリスにおける功利主義思想の展開――理論と実践の相克――
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26704002
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川名 雄一郎 京都大学, 白眉センター(経済学研究科), 助教 (20595920)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 古典的功利主義 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、本研究開始以前までの研究成果も発展させる形で、おもにオースティン、グロート、ベンサム、ミルの思想と実践的活動およびそのコンテクストについて分析をすすめた。オースティンについては、オースティン自身が自らの思想を法学にとどまらない道徳哲学(現在の社会科学)全般にわたる貢献とみなしていたという事実を重視し、彼の主著『法学の領域規定』の分析をすすめた。グロートについては、収集した未公刊手稿類の分析も取り上げ、ベンサムやジェイムズ・ミルの議論と比較しつつ、彼の青年期の民主主義論の分析をすすめた。ベンサムについては、その民主主義論とアメリカ合衆国に関する見解を、政治思想史研究において近年大きな潮流となっている共和主義思想史研究に関連づけながら検討した。この成果については、論文「ベンサム、アメリカ、共和政」としてまとめた。この論文では具体的には、二院制(上院の位置付け)、悪政の防止手段、世論の役割などの論点についてのベンサムの議論を検討するとともに、その議論を、同時代人としてベンサム自身とも交流があったジェイムズ・マディソンらによる『フェデラリスト』における議論と比較することで、ベンサムの議論の共和主義的側面を指摘した。ミルについては、2次文献の分析をすすめ近年の研究動向を理解することにつとめた。この成果については「新しい資料、新しい思想?」という研究動向論文にまとめた。また、功利主義に関する近年の研究動向の把握にも努めた。この成果の一端は上記の研究動向論文に取り込まれている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画初年度である今年度に着手する個々の論点については、資料の収集状況などによって当初の計画からいくつかの変更があったが、次年度以降に予定したものを前倒しで始めているものもあるので、全体として研究はおおむね順調に進展していると判断している。 学会発表や論文などの成果の公表についても、当初の予定通り順調に行うことができている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、まずは今年度の研究成果の論文としてのとりまとめをおこなう予定である。 全体として見れば研究は順調に進展しているが、今年度に着手して進めるべきであった研究トピックのうち進展が不十分なものについて次年度に重点的に進めるつもりである。また、次年度はロンドンでの研究者との研究情報交換を予定しており、その結果次第で計画を柔軟に修正していくつもりである。
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