2015 Fiscal Year Research-status Report
中国古筝の楽器改良における日本伝統技術の活用に関する実践的研究
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26704003
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
毛 Y 東京藝術大学, その他の研究科, 研究員 (00535552)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 中国古筝 / 楽器改良 / 転調 / 日本伝統技術 / WS(ダブルS) / 音色 / 二列箏柱 / 雲角の中間部隆起 |
Outline of Annual Research Achievements |
①二年度目の研究中には楽器製作における予期できない現象が起こったため、これまでにない新しい構造構想を生み出し、ほぼ問題解決に向けより合理的となった。その調整内容と新しい構造とは、(ア)当初設定していた基本的な箏柱の配列を保持する。但し、一列目と二列目との切り換わる位置を一本変えた、つまり13番箏柱の位置を「一列目の終り」から「二列目の始り」に調整した。よって、特に古典曲を演奏する際には左手の押す位置、及び「押し手」という左手の奏法に感じる弦全体の張力の渡方がより合理的でバランスが取れるようになった。さらに箏柱の高さもバランスが自然に取れて、従来の箏柱が兼用できるようになる事によって、将来の普及に重要なつながりを持した。(イ)従来の雲角(箏の後部にある弦を支える部分)が高音から低音に向かう方向で徐々に高くなっていくような形を、「中間部隆起する」つまり中音部を最高点とし低音と高音の両側に高さを徐々に下がっていくような形に変えた。よって、弦全体の張力のバランスがなかなか取れなかった問題をほぼ解決できるようになった。 ②二年度目に生み出した新しい構造の適合性を十分に検証するため、研究代表者が自ら積極的に各実演を行い、さらに中国国内における主な古筝演奏家や作曲家との意見交換を行ったことによって、本研究における実用思案楽器に対する予想した「一台の楽器で自在に転調できる」という目標を、二年目の実践的立証を通じて物理的にほぼその達成が認められた。 ③研究代表者が本研究の趣旨や目標を自らの講演や実演を通じて、積極的に社会へ発信しているため、ようやく二年目の後半から、特に中国本土の古筝界では日本箏製作の技術が中国の古筝にももたらす可能性に対する認識や音色に対する認識の変化が見え始まった。さらに中国本土のみならず、アメリカなどの海外にいる古筝奏者達からの本研究に対する注目度も見え始まっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
二年度目の研究に楽器製作における予期できない現象が起こった。まさにこれまでに箏製作職人の経験にない現象であった。それは本来なら、龍角(箏の頭側にある弦を支える部分)から箏柱までの寸法を増加する場合、あれに合わせて箏柱・龍角・雲角の三つの部分の高さをある程度の比例に沿って形を変えずに調整すれば対応できていた。つまり、龍角から箏柱まで距離が長くなった分、当然ながら絃の張力もかなり強くなる。それを緩和するために、これまでに上記三つの部分の寸法を比例的に高くしていた。例えば、これまでの改良箏である日本の十七絃や二十絃、三十絃などはそうであったが、中国の21絃S型もそうであった。ところが、今回の改良には、どうしても従来に経験した方法では絃の張力がうまく調整できない。職人の経験で緩和できるはずの方法を取ると、その結果が意外と真反対であった。絃の張力が緩和したところかむしろよりきつくなった。まさに職人のこれまでの経験常識がこの一点には通用しないと言っても過言ではない現象であった。そのため、様々な試行錯誤を繰り返し、これまでの常識を大胆に突破し解決策を模索に時間をかかり、計画予定のスケジュールより半年ほど遅れている。ただし、音色の出来は予想以上に遥かに良く、これも予想外の展開で、つまり音色の調整時間は予定よりかなり短縮できる見込みがあるため、現時点の進捗状況に対してやや遅れていると評価するが、本研究の全体的スケジュールには大きな影響はほぼないと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
二年度目で遅れた弦の張力を調整する部分を三年度目の前半で解決する。そして本来の三年度目で行うべき演奏会の形式による研究成果の報告準備を同時進行で行う。
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Causes of Carryover |
二年度目には楽器本体製作上に予想できなかった問題が発生したため、日本国内における楽器本体の調整活動が多くなった。その分予定した楽器付属品の製作調整のため中国への出張費用を三年度目に繰り下げる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
二年度目で生じた予想できぬ問題を三年度目前半で解決することで、三年度目には楽器付属を調整するための中国への出張が年度目にかわって多くなることが予測される。また問題解決に伴い、研究成果を社会への発信機会も多くなる予測ことによって、繰り下げた金額がそれに充当する。
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Research Products
(1 results)