2014 Fiscal Year Research-status Report
アジア地域史研究資源としてのポルトガル編年史料典籍とモンスーン文書の研究
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26704007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡 美穂子 東京大学, 史料編纂所, 助教 (30361653)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | モンスーン文書 / インド副王政庁 / ポルトガル領国インド / ポルトガル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は8月・9月、ポルトガルにおいて文書館調査をおこなった。具体的な調査先には、国立公文書館、海外領土史料館、国立図書館を選定した。また調査対象には、ポルトガルに現存する16世紀~17世紀までに記録されたアジア関係の公文書と、同時代に印刷された古典籍を選定した。結果として、国立公文書館での調査が重点的となり、同公文書館が所蔵するポルトガル植民地行政府インド副王政庁と本国との往復交信である『モンスーン文書』全点のデジタル画像が史料編纂所に有償提供された。交付申請時に記入したとおり、その費用は代表者が参加する「マルチアーカイヴァル的手法による在外日本関係史料の調査と研究資源化の研究」(科学研究費基盤研究S 代表者保谷徹)の分担金で負担された。 また、本年度廃館・国立公文書館への併合が決定された海外領土史料館に関する調査で、これまで知られていなかったさらなる『モンスーン文書』の一部の保管が明らかとなり、国立公文書館での保存に向けた手続きを経て、史料編纂所にデジタル画像の提供がおこなわれる予定である。 また次年度以降の翻訳作業の基本となるよう、アジア関係古典籍の復刻書肆や参考図書を購入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では『モンスーン文書』のデジタル画像蒐集は、代表者による文書調査の後、日本・東アジア関係のものを選定しておこなう予定であったが、日本外務省の協力もあり、東京大学史料編纂所とポルトガル国立文書館の間で、学術交流協定の締結(2015年2月)が可能となり、大規模なデジタル画像の有償提供がおこなわれた。それにより、史料の選定にかかる労力と時間が大幅に節約できた。また本研究課題は、ポルトガル語史料の情報を可能な限り多く抽出・紹介して、日本史に限らず、わが国のアジア史研究の発展に寄与することを目的とするという観点から、国立文書館が所蔵する膨大なアジア関係史料を日本で容易に閲覧できる環境を構築する途中にあるという点において、非常に有益な発展を遂げたと考えている。 史料デジタル画像の一挙入手に成功したとはいえ、それを分析・可視化する時間・要員には依然不足があるため、必要な人材の確保が急務である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の最大の研究成果は、研究課題の遂行に必要な史料を大規模に蒐集できたことである。またポルトガル国立公文書館のスタッフ、研究者ら共、研究に必要な知識の交換といった点で、十分に交流を図ることができた。次年度は、蒐集した史料の有効活用を進めるべく、まずは日本国内でポルトガル語アジア関係史料の研究会を立ち上げ、広く史料情報の共有化を図る。さらには、ポルトガルからアジア関係史料の専門家を招き、セミナーで最新の研究動向を紹介してもらうと共に、今後の共同研究体制構築に向けて、積極的に国内外の研究者との交流を図る。また国立公文書館との共同研究を強化するべく、館長ないしはアーキビストを招聘し、今後の有効な情報公開方法についてアドヴァイスを乞う。 また当初からの最優先課題である史料内容の可視化(カタログ化、要約作成)、日本語化を進めるべく、翻訳作業に着手する。翻訳は代表者が主体的におこなうほか、大学院生等に依頼して謝金形式でも進める。成果は漸次、インターネット情報媒体で閲覧できるよう整備していく。
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Causes of Carryover |
概ね今年度の予算は使いきったが、端数が生じたため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の物品購入に合わせて使用する
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