2016 Fiscal Year Research-status Report
アジア地域史研究資源としてのポルトガル編年史料典籍とモンスーン文書の研究
Project/Area Number |
26704007
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡 美穂子 東京大学, 史料編纂所, 准教授 (30361653)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 南蛮貿易 / 南蛮文化 / マカオ / 奴隷貿易 / 長崎 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年の研究では研究成果公開に向けて、研究をまとめることを主軸に活動をおこなった。和文の著書として『南蛮貿易とカステラ』(共著、株式会社福砂屋、2016年6月)・『大航海時代の日本人奴隷』(ルシオ・デ・ソウザと共著、中公叢書、2017年4月)を刊行した。『南蛮貿易とカステラ』では、カステラを代表とする南蛮菓子が日本に伝わった文化的背景を考察し、ポルトガルでカステラの起源と思われる、従来の通説とは異なる菓子のレシピを発見した。この発見は、読売新聞(2017年3月29日文化面、3月30日編集手帳)において報道され、全国的に広い認識を得た。また『大航海時代の日本人奴隷』では、これまで知られていなかったメキシコ国家文書館・ポルトガル国立文書館のアジア・日本関係史料を中心に、研究協力者ルシオ・デ・ソウザと分析を進め、個々の具体的な事例の研究の欠乏に因り、これまで信憑性を疑われてきた16世紀ポルトガル人の日本における奴隷貿易の詳細を明らかにした。また英文論文"Nanban Trade and Shuinsen Trade in 16th and 17th Century Japan"を準備し、Perez Garcia, Manuel, Sousa de Rocha, Lucio Manuel (Eds.) Global History and New Polycentric Approaches Europe, Asia and the Americas in a World Network System (XVI-XIXth centuries), Palgrave Macmillan, 2017(forthcoming)に収載が決定している。このほか、ポルトガル調査をおこない、1640年の長崎来航マカオ使節に関する包括的な新史料を発見した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
例年、ポルトガルにおいて文書館調査をおこない、文書館員との研究協力体制を築き、円滑に史料の蒐集をおこなっている。また、その成果を公開するために、著書、論文、メディア媒体などを使って発表し、研究活動が広く認識されるように務めている。 また本年度は、様々なトピックに関するポルトガル古典籍の文献情報を網羅的に収集した研究報告を9回実施した。主なテーマは、南蛮菓子、日本銀、南蛮漆器、キリシタン絵画、近世初頭の貿易品などに関するものである。多くの情報は、これまで本邦では訳出されておらず、参加した研究者の間での情報共有に役立っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終的な目標は、研究成果を英語で発信することにある。これまでの研究活動の成果は海外においても高い評価を得ており、2020年刊行予定のCambridge History of Japanの新シリーズに執筆要請を受けた。本研究の成果もそこで世界的に公開される予定である。また英語の単著を準備中であり、最終年度内には原稿完成予定で作業を進めている。「モンスーン文書」の研究は、代表者が研究分担者として参加する別の大型科研予算によって整理と目録化が進んでいる。本邦のアジア史研究に寄与するためのポルトガル古典籍の翻訳作業は順調に進んでおり、本研究終了後に、「大航海時代ポルトガル古典史料集」として翻訳と注釈を付して刊行することを検討中である。しかしながら、とくに注釈作業に関しては研究代表者の知識だけでは担いきれず、該当する地域史研究者の協力が必要であると考えるため、少なからぬ時間を要することが予測される。
|
Causes of Carryover |
本年度は、本研究の最終成果として刊行する予定の英文図書の翻訳校閲費用に、相当の予算が使われ、最終的にもう一度校閲費用謝金が発生する予定であったため、次年度の予算を一部前倒しして請求した。しかし結局、校閲依頼前の作業が、年度末以前に完了できなかったため、校閲用に準備した謝金が不要となった。そのため剰余金が発生した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度中に、英文図書の最終校閲作業が予定されているので、その予算として用いられる予定である。
|
Research Products
(16 results)
-
-
-
-
-
[Presentation] 世界の中の石見銀山2017
Author(s)
岡美穂子
Organizer
石見銀山世界遺産登録一〇周年記念シンポジウム
Place of Presentation
虎ノ門ニッショーホール(東京都港区)
Year and Date
2017-03-12
Invited
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-