2020 Fiscal Year Annual Research Report
形態学・技術学・分業論からみたアジア沿岸地域の紡織考古学研究
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26704009
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
東村 純子 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(総合グローバル), 准教授 (10465601)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 紡織 / 腰機 / 女性 / 古代 / 古墳時代 / 繊維製品 |
Outline of Annual Research Achievements |
復元した腰機や現代の手織機を用いてサンプルを作成し、出土繊維製品の組織の特徴と機の構造との関係について分析を進めた。なかでも彦根市稲部遺跡出土の繊維製品は、素材・組織とも多面的かつ、複合的な特徴を有することが判った。同時代の古墳の副葬品例と比較検討する必要があることから、絹と麻の繊維の性質の違い、編みと織りのそれぞれの組織の特徴、各種染料と染色技術の特徴について、復元実験に基づく考察を進めた。 また、関東地域の遺跡出土の紡織具について調査し、なかでも熊谷市諏訪木遺跡出土の腰機の部材、茨城県内出土の紡錘車等の分析を進めた。諏訪木遺跡では、古墳時代後期の布送具(輪状式無機台腰機の部材)、古代の管大杼(直状式有機台腰機の部材)が確認でき、それぞれ織られた布幅も判明する。また、茨城県神屋遺跡出土の「大刀自」銘の土製紡錘車は、共同体内の女性による麻糸生産と信仰とのつながりを示唆するものである。これらの分析結果に基づき、二系統に区分される腰機の技術と布の規格、麻の製糸・布生産における女性労働について考察し、論文を公開した。 さらに、国立歴史民俗博物館の企画展示「性差の日本史」(2020年10~12月)において研究成果の一部を紹介し、腰機の実大復元模型を展示した。この他、福井県内の紡織にかかわる考古・民俗資料について情報収集を行い、麻の製糸に関する新たな知見が得られたため、次年度の研究継続課題の一つとしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果の一部を、論文公表するとともに、博物館展示において公開した。
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Strategy for Future Research Activity |
文献史料や民俗・民族資料、考古資料の各研究領域を横断した考察を進め、研究成果をまとめる。
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Research Products
(1 results)