2016 Fiscal Year Annual Research Report
Source Community Utilization of Ethnological Collections for Information Sharing in Japanese Museums
Project/Area Number |
26704012
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
伊藤 敦規 国立民族学博物館, 文化資源研究センター, 准教授 (50610317)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 博物館 / 文化人類学 / 先住民 / 協働 / 博物館人類学 / ソースコミュニティ / 資料ドキュメンテーション / 著作権的配慮 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年目となる2016(平成28)年度は、招待講演や国際学会等での口頭での研究発表(14本)、5本の短文エッセイの執筆、1本の査読付き論文の刊行、2本の査読付き編著の出版を行った。
本年度もほぼ計画通りに研究を実施した。 主な実施内容は、第一に、専門的知識を有する宗教指導者やアーティストの日本の博物館への派遣とそこでの資料調査である。4月と10月に、それぞれ3名と1名の米国先住民ホピの宗教指導者らを広島県福山市松永はきもの資料館に招聘し、収蔵する324点の木彫人形の熟覧調査を行った。第二に、連携機関との情報共有であり、昨年度(平成27年11月)に資料熟覧調査を実施した愛知県犬山市の野外民族博物館リトルワールドにて、プロジェクトの進捗について公開講演会を開催した。第三に報告書や論文の執筆と刊行であり、査読付き学術雑誌(『社会人類学年報』)に投稿した論文が採択・出版し、『国立民族学博物館調査報告』に投稿した編著が二冊採択・出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
理由は二つある。 第一に、連携機関の増加である。本科研プロジェクトに申請した当時、広島県福山市の日本郷土玩具博物館は閉館が確定しており、その後の資料管理について管理者も管理方法も何もかも未定の状態であった。しかし2015年7月に福山市役所が管理者となり、松永はきもの資料館と名称変更して再オープンを果たした。この時には本科研プロジェクトで共同研究を実施できるとは思っていなかったが、その後事務長に直談判し、共同調査の実施を了承していただいた。それによって本年度に324点の全ての「ホピ製」木彫人形資料の熟覧調査を終えることができた。 第二に、成果公開である。プロジェクト期間は4年間であるものの、初年度と二年度目に実施した内容について三年度目にまとめ(1,375頁)、査読付き学術雑誌として出版できたのは大きな前進であった。
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Strategy for Future Research Activity |
2016(平成28)年度に引き続き、これまで実施した資料熟覧調査の動画データの文字起こしと熟覧者との協働編集作業を進め、カルチャルセンシティビティへの配慮を行い、翻訳作業を進める。それらが済んだ段階で、成果報告書にまとめ、査読付き学術雑誌に投稿して出版・公開を目指す。加えて、資料熟覧調査の実施に不十分さがある場合には、伝統的知識保持者を対象機関に招聘し、補足的な資料熟覧を実施する。 なお、所属機関(国立民族学博物館)および連携機関(天理大学附属天理参考館)で、本プロジェクトのテーマに関連する展示会を企画することになった(国立民族学博物館:特別展「(仮題)万博資料収集団」、天理大学附属天理参考館:企画展「(仮題)アメリカ先住民資料展示」)。つまり、本プロジェクト最終年度には、学術出版やソースコミュニティとの成果の共有だけではなく、展示会を通して広く一般に成果を公開できる見通しが立った。
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Causes of Carryover |
交付申請書に記載した経費に対して実支出額が減じた理由は以下である。春と秋のソースコミュニティの招聘に際して、家族の看病という当初予期できなかった理由によってキャンセルが生じたため、旅費(招聘帰国旅費)が大幅に減じた。 それに対して支出が増加したのは「その他」の項目であり、広島県福山市松永町の博物館への機材発送代、研究成果の多言語での公開のための英文校閲費、海外出張時のレンタカー代金(出張先が豪雪地なので冬季出張時には大型の車を借りる必要が生じた)であった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度にソースコミュニティの招聘を予定しているのでその旅費(外国人招聘帰国旅費)に充てるのと、これまでの招聘時に実施した資料熟覧調査の動画データの文字起こし及び日本語への翻訳、ソースコミュニティとの確認作業、さらに動画編集(日本語字幕入れ)などを行う必要があるので、旅費やその他(業者請負)などに充当させていただく。研究成果の多言語出版に際しては、英文校閲費用にも充当させていただく。
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