2014 Fiscal Year Annual Research Report
デジタル化ナノチャネルに基づく単一細胞オミクス計測技術の確立
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26706010
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
許 岩 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 講師 (90593898)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | デジタル化ナノチャネル / 単一細胞オミクス / 細胞計測 / ハイスループット計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
代表者がこれまで携わってきたナノチャネル技術と1分子計測技術に基づいて、単一細胞内のすべての生体分子を1分子単位かつハイスループットで計測することが可能な技術としてデジタル化ナノチャネル(DN)を提案するとともに、これに基づく全く新しい細胞計測技術の確立が本研究の目的である。平成26年度は、DN構造の作製条件の検討、DN構造を有するナノ流体チップの接合技術の開発、DN構造を用いた1分子検出のための自己組織化単分子膜の構築を行った。(1)DN構造を作製するには、電子ビームリソグラフィや、プラズマドライエッチング、蒸着、リフトオフなどの多段階ナノ加工プロセスを利用した。それぞれのプロセスのパラメーターの検討実験によって、超高精度(数字nm)の位置とサイズの制御ができる、高密度、安定的なDN構造の作製条件を明らかにした。その作製法は、特許として出願している(特願2014-101461号)。(2)DN構造にナノスケールの金構造がある。従来のガラスチップfusion接合は、1060℃の接合温度が金の融点に近いので、DNチップの接合に利用できない。また、代表者が開発した室温接合は、フッ素ガスを使うため、金をエッチング・フッ素化する効果があり、DNチップの接合に適合した方法とは言えない。従って、DN構造を有するチップのダメージレス接合は課題であった。この課題に対して、酸素プラズマ処理などの複合プロセスを開発し、DNチップのダメージレス接合は低温600℃で実現した。(3)提案したDN検出法では、自己組織化単分子膜(SAM)を利用して標的タンパク質捕獲用の抗体を固定する。作製したDNチップを用いてチップ内にSAMを形成させることで、高密度かつ高分解能を有するSAMのナノアレイの作製に成功した。この結果は、化学マイクロ・ナノシステム分野で最高峰の学術誌であるLab on a Chipに発表され、さらに裏表紙(Issue 9、2015)を飾った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、若干の方針変更はあったものの、研究実績の概要で述べたように、DNチップ作製のために必要かつ不可欠である条件を明らかにするとともに、DNチップを用いて1分子計測のfirst stepであるSAMのナノアレイの形成に成功しており、当初の目的はほぼ達成した。また、当初の計画の推進により、タンパク質非特異吸着がDNに基づく高感度1分子検出に大きな支障になることが新たに明らかとなった。この新たな重要課題を解決するため、以前に代表者が培ってきたマイクロスケールでの非特異吸着抑制の経験を活用し、ナノチャネルの極めて小さい空間に適合する、タンパク質非特異吸着の抑制ができるリン脂質モノマーの分子設計、合成、及び評価も始めているところである。従って、平成26年度は当初計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、DNのコンセプトを実現するため、抗体の高密度固定化、標識体検出範囲の確認、非特異吸着の抑制法の開発に取り組む。(1)標的タンパク質を高効率的に捕獲するため、DN内抗体の高密度アレイ化の条件だし実験を行い、その最適な条件を明らかにする。(2)高感度で1分子の信号を容易に検出するため標識体を利用する。DNによって標識体を検出し、さらに標識体の検出範囲を明らかにする。(3)DN内タンパク質非特異吸着抑制のため、リン脂質モノマーの合成、評価、及びそのナノスケールにおけるコーティング技術をさらに推進する。
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Causes of Carryover |
アメリカのサンアントニオで10/25-11/1開催の国際学会「MicroTAS2014」に参加する予定だったが、ビザの発行が間に合わず出発できなかったため、出張をキャンセルした。その学会参加の予算は残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度プロジェクトを推進するための実験用の消耗品・試薬・基板などの購入に使用する予定である。
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Research Products
(12 results)